【中小企業の銀行対策】「現金過不足」がPLの信頼性を上げる理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、「現金過不足」がPLの信頼性を上げる理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 現金が合わないのが自然である
2 架空の現金計上は取引金融機関の信頼を一発で失う
どうぞ、ご一読下さい。
1 現金が合わないのが自然である
経済産業省によれば、2024年の我が国でのキャッシュレス決済の比率は、クレジット、デビットカード、QRコード決済などを足し合わせあると、42.8%(金額ベースで141.0兆円)に達するのだそうです。
金額ベースなので、より金額の大きな財・サービスの購入にはキャッシュレスが利用される傾向があるので、もしかすると、件数ベースでは、もう少しキャッシュレス決済の比率は低くなるのかもしれません。
北出は、完全にキャッシュレス派で、QR決済とクレカを使い分けるようにしていますが、貯められるポイントもバカにならないので、まずまずのポイ活をしています。
とはいえ、まだまだ市中では、「うちは現金だけなんで・・・」、「じゃあ、もういいです〜」というやりとりがなきにしもあらずですし、もしかすると、関西の方が現金志向が強いのかもしれません。
このため、B to Cの飲食業や小売業では、現金取引が底堅く行われているお店もなきにしもあらずです。
とはいえ、B to Cの商いで、現金の管理は現場での負担になっていることは間違いなさそうです。
特に、飲食業で、ランチ時やディナータイムといった繁忙時間帯には、どうしても釣り銭の間違いが起きてしまいます。
レジ係のホール担当者がどれだけ気をつけていても、100円玉と10円玉、50円玉と5円玉、千円札と五千円札の取り違えは避けようがありません。
1日の営業が終了して、レジを締め上げてみると「現金が合わん」となった場合、帳簿上の大原則は、「現物に合わせる」ことに尽きます。
現金が帳簿と相違した場合には、「現金過不足」という勘定科目を使います。
ちなみに、一回当たりの最大の現金化不足の金額は、1千円の現金売上げ時に5千円札を預かって千円札4枚を返却すべきところを、5千円札を1万円札に誤認して、9千円のお釣りを渡してしまうケースがそれに当たります。
この場合の現金過不足の金額は5千円となり、
(借方)現金過不足5,000円/(貸方)現金5,000円と仕訳られます。
このような大きな金額の現金過不足が発生しないよう、チェーン店などでは、マニュアルで1万円札を預かった時点で、1万円札を店舗の奥に避難させて、1万円札を預かったことを、店長や副店長といった管理職に報告するようにしているところが見受けられます。
このように、現金過不足が発生することは恥でもなんでもなく、ごく自然なことなのです。

2 架空の現金計上は取引金融機関の信頼を一発で失う
話は変わりますが、金融機関では、融資先の評価を行う際、BS(貸借対照表)を実態ベースで査定を行います。
例えば、仮払金、立替金といった費用性の資産や貸付金等資産性の乏しい資産や、棚卸資産の過剰計上の有無について査定を行います。
ところが、「現金」は文字通り現物なので、査定対象の資産ではありません。
このため、現金5,500千円とBS上で計上されていたら、資産査定上、5,500千円満額で評価します。
ところが、世の中の中小企業の中には、貸付金等に振られないまま、存在しない現金が計上されていることがなきにしもあらずです。
万が一にも、取引金融機関担当者から、「社長、この5,500千円の現金て金庫にしまってあるんですよね」と質問されることがあれば、金融機関が警戒している証左です。
特に、飲食業や小売業といった現金商売では、現金の取扱には取引金融機関が関心を払うのは当然です。
ですので、逆説的なのですが、少額の「現金過不足」が計上してあることで、「毎日、現金について現物と帳簿を合わせていて、ちゃんと現金を管理しています」というメッセージを鳥居引金融機関側に送ることができるのです。
現金商売で、「現金過不足」が計上されていなかったら、取引金融機関としては、「この現金、ホンマに、合ってんのかいな」と疑問に思ってしまうのです。
万が一にも、現金架空計上が取引金融機関の知るところとなれば、支店長は「この決算書も社長も信用ならん。ニューマネーはもう出すなよ。回収一辺倒で行けや」とキッツイ指示を担当者に飛ばすことにもなりかねません。
現金過不足自体、金額も少額なので「大した勘定科目ではなく、大勢に影響はない」と中小企業経営者は考えがちですが、現金化不足を適正に計上されることで、決算書や試算表の信憑性を上げることができることを話すれてはならないのです。
資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へもご一読下さい。
