【中小企業の銀行対策】金融機関のバブル入行組ベテラン融資マンの役職定年に備えなければならない理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、金融機関のバブル入行組ベテラン融資マンの役職定年に備えなければならない理由について考えます。
今日の論点は以下の2点。
1 バブル入行組ベテラン融資マンは職人のような存在である
2 経営改善局面の中小企業経営者は金融機関任せにしてはいられない
どうぞ、ご一読下さい。
1 バブル入行組ベテラン融資マンは職人のような存在である
北出は、お客様の中小企業経営者と共に、お客様毎に毎月、金融機関へのモニタリング(業況報告)のため、お客様の会社の取引金融機関に同行して、資金繰り表、試算表、受注明細などを持参しています。
お客様の会社には、金融機関は外回りや融資の内勤の担当者がついています。
担当者が人事異動や係替えで替わっても、基本的には、ちゃんと引き継ぎがされています。
ところで、お客様の会社が経営改善局面や、もっと言えば、経営再建のフェーズにある場合には、金融機関営業店の担当が、融資課長や融資役席といったポジションの方が担当するケースが多くなります。
その融資課長や融資役席は、営業店は変わっても、長く融資畑を務めてきた人が大半です。
そんな融資課長や融資役席が、55歳の役職定年を迎えつつあります。
今年55歳の役職定年を迎える銀行員は、浪人や留年することなくストレートで大学を卒業したのが1991年(平成3年)です。
1991 年といえば、バブル期最後の最後、でも、当時は、世の中は、「まだまだいける!!」と息巻いていました。
リゲイン飲んで、24時間働かなければならない時代でした。
今年55歳の役職定年を迎える銀行員は、入行直後はギリギリいい想いをしたかもしれないけれど、あっという間にバブルは崩壊。
その後の、リーマンショック、中小企業金融円滑化法によるリスケジュールの普及、とどめの新型コロナウイルス対応で、融資課や融資係は防戦一方でした。
同期でも、40歳そこそこで支店長になって、役員待遇を勝ち取った人には役職定年は無縁ですが、金融機関の組織風土上、「原点主義」が罷り通る中では、融資課長や融資役席はなかなか加点を得ることができません。
経営改善局面になると、融資先の担当が営業課や渉外係から融資課長、融資役席に担当替えとなります。
融資課長、融資役席は本部の審査部、融資部の調査役、審査役から詰められ、融資先の経営者との板挟みとなって、苦労が絶えません。
いつしか、融資課長や融資役席は、まるで職人のような仕事スタイルを確立するようになります。
そんな融資課長や融資役席が役職定年を迎えるタイミングが今年、来年、再来年です。
役職定年を迎えた銀行員は、事務センターやローンセンターのようなバックオフィスで裏方として仕事をするか、関連会社、融資先へと出向に出されるのが普通でした。
しかしながら、大量採用されたバブル組が一斉に役職定年を迎えることで、銀行本体のバックオフィスにも、出向先にも十分なポストがありません。
一方で、バブル崩壊後は、金融機関は新卒採用を一挙に絞り込んだため、40代前半や30代の中堅が少なく、特にリスケジュールや経営改善へのノウハウがベテラン融資マンから中堅に十分ノウハウが伝承されていません。
職人のような仕事スタイルを確立した融資課長や融資役席の金融機関への貢献度は北出に言わせる大きいのですが、そんな彼ら、彼女が一斉に役職定年を迎えるのは不安でしかありませんし、融資先の経営者のためにもならないのです。
2 経営改善局面の中小企業経営者は金融機関任せにしてはいられない
役職定年の事例は、上場している銀行の場合、定時株主総会終了直後の7月1日付が多いようですが、実際、ここ3ヶ月ほど、前任者が役職定年となり、その後を継いだ次の担当者を見ていると、正直なところ、「ホンマに、こいつ、大丈夫かいな?」と思うことがままあります。
新担当者から「こういうケースって、今まであんまり触ったことがないんですよねえ」なんてシャアシャアを言われると、正直なところ、吐き気を催します。
北出は良いのですが、気の毒なのが、経営改善局面の経営者です。
融資畑が長かった前任者は、阿吽の呼吸で次の次を見据えた話もできましたが、新担当者が、(そんな話、初めて聞くんやけど)みたいな顔をされると本当に困ってしまいます。
まだ大きな営業店であれば、次席が二人いたりすると次席がフォローして同席してくれたりするケースもあるのですが、次席がおらず、役席も3人だけといった小規模な営業店では、新担当者は相談する相手もいないのではないかと心配になります。
残念ですが、そういうケースの場合、帰りのクルマの中や、会社の応接室で、「社長、残念ですが、ハズレです」と諭すしかありません。
そして、さらに大切なのが、北出も含めてそうなのですが、金融機関任せにはしておけない、というのが実感です。
経営改善局面の中小企業経営者は、金融機関がベテラン融資マンが短期的に営業店を去っていくことを念頭に置きながら、既に固めてあるアクションプランの進捗状況を逐一確認しながら、進捗が不十分な場合は遅れを取り戻すための施策を具体化し、速攻で実行に移して、経営改善のスピードを上げていく必要があるのです。