【中小建築業の生きる道】一般施主に住宅ローンを肌で実感させるコツとは?
今日は、中小建築業の営業施策として、一般施主に住宅ローンを肌で実感させるコツについて考えます。
今日の論点は以下の2点。
1 家は一般施主にとって人生最大の買い物である
2 建築業者として一般施主に住宅ローンを実感させる
どうぞご一読下さい。
1 家は一般施主にとって人生最大の買い物である
昔っから、普通のサラリーマンにとって、家は、人生最大の買い物である、というのが定説です。
一軒家にせよ、マンションにせよ、新築物件であれば数千万円の買い物です。
最近、円安の急速な進行によって建築資材の価格が高騰していることに加えて、建設現場の人手不足を反映した労務費や外注費の上昇によって、5千万、6千万は当たり前、大阪や首都圏では新築マンションが1億円というのも珍しくなくなりました。
大手住宅メーカーでは、新築注文住宅の坪単価が150万円程度も当たり前です。
建坪40坪なら、ざっと6,000万円。
消費税だけで600万円で、立派な高級車が買える位です。
これでは、非正規従業員では、家を買うのは困難です。
あれよあれよ、という間に、一気に住宅価格が高騰してしまいました。
一軒家で土地から購入となれば、大変な金額になってしまいます。
一方で、親や祖父母から住宅資金の贈与を受けられる家庭が存在していて、どうせ相続税で取られるのであれば贈与してしまえ、というわけで、中小建築業者が相手にする一般施主もそのようなケースが少なからず見受けられます。
中小建築業経営者が留意すべきことが、建築業の仕事の上と一般施主さんとの間では、おカネの感覚がまるで違うことです。
建築の仕事をしていたら、動くおカネの単位は百万円から、です。
複数の物件の工期が被ってしまって、最終の施工代金の回収までの立替資金が30百万円足りないので、メインバンクに引当30百万円、現場の物件の位置はどこそこで看板は出ていて写真を撮ってきます、請負契約書と受書の写しを下さい、手形期日来年の1月末で、なんて普通のやりとりです。
しかしながら、普通のサラリーマンなら、30百万円の現金なんて見たこともないし、どう考えても、ピンと来なくて当たり前です。
施工代金40百万円、おじいちゃんからの住宅資金贈与と自己資金で10百万円、残り30百万円を住宅ローンを組むといっても、「30百万円、はあ〜??」という具合に、なんだか雲を掴むような話になってしまって当たり前です。
住宅ローン、金額30百万円、期間35年といっても普通の人が実感できるはずはなく、実感できるのは唯一、「月額返済額」です。
このように、一般のサラリーマン家庭にとって、家は人生最大の買い物で、ピンと来ないものなのです。
2 建築業者として一般施主に住宅ローンを実感させる
一般のサラリーマンが住宅ローンを組むとなると、まず、金融機関のドアを叩きます。
昔は、金融機関営業店(支店等)のローカウンターで融資係と面談してローンの説明を受けて、「お願いします」となれば、手続きを進めて審査を経て実行となりましたが、最近の金融機関は営業店での事務負担軽減から住宅ローンをローンセンターのような住宅ローン専門の窓口に集約しています。
場合によっては、金融機関との面談はなく、すべてネット上で帰結してしまう無店舗型住宅ローンを供給するリテール専門の住宅ローン業者も存在します。
ローンセンターやましてやネット銀行であれば、ローンの組成にかかる全て手続きが極めて事務的に進められます。
その昔、金融機関の営業店の融資係であれば、「Aさん、確かに年間の返済負担はクリアしてますけど、これから子供さん、大きくなっていくんですよね。塾とか、習い事とか、教育費とかかかるんと違います? そしたら、色々おうちへのこだわりも分かりますけど、もう少し、住宅のどこかを見直して、あと3百万円圧縮された方がええかもしれませんよ」などというお節介があったかもしれませんが、ローンセンターやネット銀行ではそのような温情は一切ありません。
もちろん、従来からの金融機関営業店で住宅ローンの延滞が発生すれば、債務者への連絡、督促、内容証明の発送、最終的には競売へ、と融資係は面倒で、できればやりたくない仕事をやらなければなるので、延滞を発生させたくないというのは、融資係の本音でもあります。
お節介な融資係ではないけれど、「30百万円ものローンを組むのに、ネット上だけの手続きで本当にええんですか?」と近未来の住宅ローン債務者に突っ込んでしまいそうです。
さらに、ほとんどの金融機関がおしなべて変動金利を勧めてきます。
確かに、足元の見た目の返済額は少なくなるかもしれませんが、今のようなゼロ金利、超低金利が35年間続くとは考えられません。
TIBOR3ヶ月ものが3%や5%にまで上がっていけば、住宅ローン金利は天井無く上がっていきます。
元利均等なので月額返済額は変わりませんが、住宅ローンをいくら払っても利払いのみで、元本は一向に減らず、実質、リスケジュール状態になってしまうことも想定されます。
住宅ローン債務者によっては、年間返済負担への配慮から、返済期間を35年超、40年とかに設定するケースも見受けられるようです。
40年間の住宅ローンなんて、もはや尋常ではありません。
「狂ってる」の世界でしかありません。
こういってはなんですが、最後は「団信にて完済」が暗黙の世界かもしれません。
住宅ローンの過半が変動金利となっていることも気になります。
金融機関が金利変動リスクを住宅ローン債務者に押し付けています。
また、ネット銀行では、延滞時には容赦がなく、下手をすると2ヶ月程度の延滞で競売、強制執行に踏み切るケースも見受けられます。
金融機関は、住宅ローンについては一番の順位で抵当権を設定しますし、保証会社の保証もついているので、いわば「ノーリスク」です。
30百万円の住宅ローンをよくわからないまま、金融機関の言うとおり組んでしまうと、後々禍根を残すことにもなりかねません。
建築業者としても、完工して検査をクリアして引き渡しが済めば、あとは施主がどうなろうが知ったこっちゃない、というスタンスを取っているケースも無きにしもあらずです。
特に、大手の住宅メーカーの営業マンは、自身の歩合にしか興味がなく、「知ったこっちゃない」です。
ところが、中小建築業者のほとんどは地域密着です。
「知ったこっちゃない」では、地域密着の営業スタイルを貫くことはできません。
「地元のX工務店で3年前に建てた近所のあのおうち、競売になってるらしいで」と居酒屋で噂になれば、「気の毒な話やな。あのX工務店で家建てたら、えらい目に遭うで」と風評が立ちかねません。
地域密着の中小建築業者だからこそ、金融機関でもなく、大手住宅メーカーでもない「お節介な営業スタイル」が必要です。
30百万円の住宅ローンを組むということがどういうことなのか、返済期間が35年間の長期にわたることをサラリーマンの一般施主さんに実感させることが、中小建築業の生きる道です。
中小建築業者の経営者や営業担当、現場監督は、金利の感覚を身につけて住宅ローン専門家になって、施主さんファーストの営業に徹する必要があるのです。