【中小企業の銀行対策】複数の取引金融機関とのバランスを保つ重要性とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、複数の取引金融機関とのバランスを保つ重要性について考えます。
今日の論点は、以下の2点。
1 メインバンクの地位は揺るがせない
2 サブ行以下のメンツを潰してはいけない
どうぞ、ご一読下さい。
1 メインバンクの地位は揺るがせない
非上場の中小企業にとって、取引金融機関は重要な資金調達源です。
仮に、年商2億円や3億円程度の中小企業、小規模事業者であっても、メインバンク一行取引というのは少数派です。
金融機関は、どこも新規融資先の開拓に躍起です。
今まで無縁であった金融機関の新規専担(新規融資開拓専門の担当者)が、帝国データバンクのCosmos2などを参照して突然会社にやってきて、「ぜひ、新規のご融資をお願いします」と新規融資を売り込みにきます。
帝国データバンクの評点は、一般的に51点以上が比較的安全な会社とされますが、どの金融機関も営業エリア内の評点51点以上の会社は行きつくしているので、評点D1で51点未満であっても、新規専担は飛び込み営業を敢行してきます。
中小企業経営者としても、新規融資の売り込みとなれば悪くはないお話なので、メインバンクの担当者には内緒で、新規融資に応じたりします。
中小企業、小規模事業者であっても、一行取引というのが少数派である理由は、どの金融機関も新規融資開拓に注力しているからです。
とは言え、北出がお客様の中小企業経営者に強くお願いするのは、「メインバンクの地位を揺るがせてはいけない」ことです。
メインバンクには信用保証協会の融資を優先的にお願いすること、メインバンク以外に担保提供はしないこと、お客様からの入金、総合振込と給振をメインバンクで行うことを徹底することによって、暗黙の内に、メインバンクの地位が確立されていきます。
新型コロナウイルス感染症拡大のような非常事態であれば尚更、メインバンクの重要性が高まります。
非常事態に陥った時、中小企業側がメインバンクと思っていた金融機関から「うちはメインじゃなくて、メインのX銀行さんにお願いするのが筋ですよ」となってしまうと悲惨です。
メインバンクの地位は、どのような時にでも、揺るがせるようなことがあってはいけないのです。
2 サブ行以下のメンツを潰してはいけない
メインバンクは絶対で、メインバンクとの信頼関係は、中小企業にとって死活問題であることは言うまでもありません。
他方、いかに帝国データバンクの評点を見て飛び込み営業でやってきたとは言え、サブ行以下の取引金融機関を邪険に扱うことも決してあってはならないことです。
中小企業とサブ行以下の取引金融機関との関係で、よく見受けられるのが、「接触は年一回だけ」です。
サブ行以下の取引金融機関は往々にして、返済期間の5年間の長期資金を放り込んで、あとは放置というのがよくあるパターンです。
とは言え、金融機関としては、自己査定(資産査定)はやらねばならないので、決算が閉まって税務申告が完了したタイミングで、サブ行以下の担当者から「社長、決算書を頂きたいのですが」と電話がかかってきて、担当者と経営者との久々の面談です。
これが「接触は年一回だけ」の典型的なパターンです。
「接触は年一回だけ」では、担当者としては融資先の状況をつぶさに把握することができず、融資先が抱えている課題に対する提案もできません。
しかしながら、金融機関は、規模が大きくなればなるほど、様々な情報を持っているので、サブ行以下との取引金融機関との接触機会が少ないのは、債務者の中小企業としてはもったいない話です。
弊所では、お客様の中小企業、小規模事業者の経営者には、メインバンクだけではなく、サブ行以下の取引金融機関各行にも、月次の業況報告(モニタリング)を行うようにしています。
モニタリングで取引金融機関各行の担当者と面談(Zoomも含む)する際には、メインバンクから、サブ行、サブサブ行という序列の順番通りに面談するようにしています。
メインバンクとの面談の最後には、「この後、サブ行の〇〇銀行にお邪魔して同じような内容の報告をしてきます」と申し上げて、サブ行との面談の最初には、「先ほど、メインさんと面談してきました」と申し添えることによって、各金融機関の暗黙の序列付けをするようにしています。
また、資金調達についても、メイン行一本槍ではいけません。
例えば、飲食業であれば、今回の出店資金はメインさんで、次の出店の分はサブ行さんで、あるいは、建設業であれば、今回の引当(短期繋ぎ資金)はメインさんで、次に取り掛かっている次の物件の引き当てはサブ行さんに、という風に、極力、長期だけを放り込みっぱなしにならないように留意するようにしています。
このように、メインバンクとサブ行以下との序列を明確にしながらも、サブ行以下のメンツを潰すことのないような配慮が必要です。
とかく、金融機関は、カチカチの謂わば「軍隊組織」に近いようなピラミッド型組織であるため、メンツを潰すようなことがあってはいけません。
中小企業経営者は、複数の取引金融機関とのバランスを保つ必要があるのです。