【中小建設業の銀行対策】引当融資を期日に完済するために留意すべきこととは?

今日は、中小建設業の銀行対策として、原材料高、人手不足の中、引当融資を期日に完済するために留意すべきことについて考えます。

今日の論点は、以下の2点です。

1 実行予算に原材料の先高感を反映させる
2 期日に完済することがメインバンクとの信頼関係構築に直結する

どうぞ、ご一読下さい。


1 実行予算に原材料の先高感を反映させる

中小建設業の倒産件数が増加しています。
帝国データバンクの調べによると、2023年1年間の建設業の倒産件数は1,600件を超え、2024年に入っても増加基調です。
中小建設業の倒産増加の要因は、ざっと、原材料高と人手不足です。

弊所のお客様の中小建設業の状況からしても、明らかに、工事粗利益率は低下傾向です。
円安基調によって原材料高が進み、人手不足から外注費も嵩む傾向です。
コロナ禍で、住宅設備の仕入が困難な状況からは脱していますが、メーカーや問屋の方が強気な売り方をしてきます。
総合建設業の場合、施工の大半は工程毎に外注業者への依存度が高まりますが、協力会の外注業者も人手不足です。

とはいえ、工期は厳然と決められているので、粛々と現場を進めていかねばなりません。
このため、無理に「この現場は必ず、工事粗利益率28%を死守する」という姿勢に固執していると、現場が進むにつれて、実際の原価はもっと高くなってしまって、完工して、最後に蓋を開けたら、実際の工事粗利益率は19%となってしまいました、ちゃんちゃん、では話になりません。

このため、受注前の積算段階のうちから、原材料や外注費の先高感を反映させて、工事粗利益率を絵に描いた餅にしないような実際に近い工事粗利益率を設定することが肝要です。
特に、大型工事で、工期が半年超となる長丁場の現場であれば、尚更です。

たとえ、蓋を開けてみたら、工事粗利益率が19%であっても、積算段階で「頑張って28 %、必ず確保します」と言っていた場合と、事前の段階から保守的に積算していて、「この現場はきついので、正味20%がギリギリのところです」と言っていた場合とは、天と地との差があります。

このように、実行予算を組む段階から、事前に、原価の先高感を盛り込むことが令和の今の中小建設業に求められることに他ならないのです。

【中小建設業の銀行対策】引当融資を期日に完済するために留意すべきこととは?

2 期日に完済することがメインバンクとの信頼関係構築に直結する

それでは、工期を遵守して、実行予算通りの工事粗利益を確保しなければならない理由はどこにあるのでしょうか?

そもそも、元請建設業(下請業者も含む)の場合、前渡金や前受金をもらえるにしても、工事代金の大半の受領が完工、検査完了後となります。
その間、原材料を調達して、外注業者に現場でワークしてもらわなければなりません。
当然、おカネを支払わないとメーカーや問屋さんは原材料を売ってくれませんし、外注業者も少なくとも工事の進捗見合いで外注費を支払ってあげないと現場をしっかりとこなしてくれません。

このため、大型物件ほど、自己資金で回すことが困難で、工事見合いの工事引当の繋ぎ資金をメインバンクから調達しなければなりません。
一方、メインバンクは、最終の工事代金で繋ぎ資金(短期資金)を返済原資としますが、工事代金に担保を設定するわけにはいかないため、基本的に繋ぎ資金は「信用扱い」となります。
メインバンクとすれば、工事が工期通りに完工して、検査も無事完了して、役所や施主から最終代金が不利jこまれてきて、初めて、全額回収することができます。
他方で、工期が遅延して、最終代金の振り込みが遅れると、メインバンクとしては期日に回収できなくなってしまいます。
もちろん、完成検査が遅れたり、天候の問題など、不可抗力による工期の遅延の場合には、メインバンクは手貸の書き換えに応じますが、労災事故等、業者側の不手際による工期の遅延が発生すると、メインバンクとしては非常に困ったことになってしまいます。

また、工事粗利益が実行予算対比で大幅に下振れた場合、最悪の場合、「役所からの入金はあったけれど、全額返済してしまうと給与が払えなくなるので、返済を待ってほしい」ということになると、メインバンクとしては明確な約束違反となってしまいます。
挙句の果てには、「引当物件の入金がなくても、期日に資金をかき集めて完済するように」などということなりかねません。
このような事態が起こってしまうと、メインバンクの支店長は担当者に「あそこには、もう引当は出さん。資金が必要なら、保証協会の保証付けて、約弁(約定弁済、60回、84回等で月々返済すること)つけること」と取組スタンスが厳しくなってしまいます。
これでは、安定的に大口の工事を受注できなくなり、大口工事を受注する場合でも、立替資金を最小限に抑えるため進捗見合いで工事代金を回収するような受注しか取れなくなってしまいます。

このように、実行予算を遵守して、完工・検査完了を当初の契約通りに行なうことに当たり前に継続して、引当融資を期日までに必ず完済することを続けていくことこそが、中小建設業が金融機関との信頼関係を高移築していくための条件です。

中小建設業経営者は、「期日に完済することがメインバンクとの信頼関係構築に直結する」ことを肝に銘じて、実行予算管理と現場の進捗管理を現場監督に任せきりにすることなく、自ら必要に応じて点検することが重要なのです。

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