【中小企業の銀行対策】現預金の金額を正確に決算書・試算表に反映させなければいけない理由とは?

今日は、中小企業の銀行対策として、金額を正確に決算書・試算表に反映させなければならない理由について考えます。

今日の論点は、以下の2点。

1 現預金は「現物」である
2 現金商売で現金化不足勘定がない試算表は信憑性に乏しい

どうぞ、ご一読下さい。


1 現預金は「現物」である

一般に、試算表や決算書の「資産の部」は、おカネへの換金制の高い順番に並んでいると解されています。

建物や土地は、おいそれと売れるものではありませんし、そもそも商いに使用している不動産を売って仕舞えば、商いが成立しなくなる可能性が高まります。

そんな「資産の部」の最も右上に存在するのが、現預金勘定です。
現金は、現金そのものですし、銀行預金も預金保険の対象で、簡単には目減りしないので、現預金が「資産の部」の頂点に位置するのは当たり前と言えば当たり前です。

現金と預金について言えば、銀行預金は、決算時点では残高証明書を金融機関から発行してもらえば、銀行預金は1円の誤差も出ません。

ところが、現金の場合には、まさに、現金に色はついていませんが、現金こそ、「現物」そのものです。
紙幣の枚数と硬貨の枚数を数えて、現金出納帳と合致するのが当然なのですが、小売業や飲食業のような現金商売の場合、お昼時の飲食店は繁忙を極めるため、釣り銭の間違いが起こっても不思議でもなんでもありません。

現金の「現物」と現金出納帳の現金残高に差異が見られる場合には、その差異が発生した原因を可能な限り究明すると共に、現金出納帳を現金の現物に合わせて「現金化不足」を計上しなければなりません。

金融機関の自己査定でも、現金預金は査定の対象にはならず、簿価100%で評価します。
金融機関としては、まさか、存在しない現金が決算書や試算表に計上されているとは、よもや想定していないのです。

まさに、現預金は「現物」そのもので、その管理は厳格に行われなければならないことは言うまでもありません。

【中小企業の銀行対策】現預金の金額を正確に決算書・試算表に反映させなければいけない理由とは?

2 現金商売で現金化不足勘定がない試算表は信憑性に乏しい

そんな厳密な管理が求められる現預金勘定ですが、中小企業、小規模事業者の中には、試算表を拝見させて頂くと、「え、ほんまに現金、こんなに持ってはるんですか?」と言うくらいの現預金が計上されているケースが無きにもしもあらずです。

経理担当のお話を伺うと、「私が経理を担当する前からずっとそうなんです」との言い草です。
2、3百万円の存在しない現金が平気で現預金勘定に計上されていると、北出も、まあまあ、ひるみます。
おそらく、接待交際費で計上できなかった領収書相当分(使途不明金と言われても仕方がありませんが)が貸付金に計上されていたらわからないのでもないのですが、接待交際費で計上できなかった領収書相当分が存在しない現金で計上されているのは、本当にまずいことになります。

このような場合は、社長にも腹を括ってもらって、雑損失等で費用計上(税務上の取扱が微妙ですが)して、存在しない現金を計上してきた顛末を金融機関に伝え、以降、現金出納帳を厳格に運用することを金融機関と約束するのですが、「粉飾決算やないですか!」と指摘されたら、グーの音も出ません。
日頃から、社長が金融機関に立派なことを言っていても、現金管理ができていないと金融機関から烙印を押されてしまうと、取引金融機関との信頼関係を維持することが難しくなってしまいます。

使途不明金的な性格のものを、存在しない現金で計上するのは論外としても、現金商売であるにも関わらず、「現金化不足」が計上されていない決算書、試算表は信憑性が乏しくなります。
現金商売で現金の現物が現金出納帳とずっと合致し続けると言うのは、実務的に考えにくいからです。

中小企業経営者は、「たかが現金」と甘く見るのではなく、決算書、試算表の信憑性を疑われないためにも、現金が「現物」であることをしっかりと認識して、常日頃から、社内の現金管理を徹底する必要があるのです。

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