【中小企業の銀行対策】借入金の返済額の差が価格競争力を左右する理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、借入金の返済額の差が価格競争力を左右する理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 借入金の返済額はPLには現れないコストである
2 借入金の圧縮が価格競争力を決する
どうぞ、ご一読下さい。
1 借入金の返済額はPLには現れないコストである
多くの中小企業が同業他社との競合にさらされています。
特に、下請けの製造業などは、親会社への価格引き上げ交渉が難しく、今時の賃上げ原資の確保にも支障が出かねない程です。
一般に、多くの経営者が、損益分岐点を意識して、売上を立てていく傾向が強いようです。
しかしながら、損益計算書(PL)には、当たり前ですが、借入金の返済額は表示されません。
簡易的な長期借入金の返済原資としては、「簡易CF」=「経常利益」ー「営業外収益」ー「法人税等」+「減価償却費」で計算されます。
損益分析点を売上目標としていると、無借金経営であれば、現預金が減ることはありませんが、損益分岐点ギリギリの損益に減価償却費を除した金額であれば、借入金の元本返済額分だけ、現預金が減っていくことになります。
損益分析点を売上目標にしてしまうと、やがて長期借入金の返済に支障が出てきて、長期借入金の折り返し(返済した分だけ借り換えること)を余儀なくされてしまいます。
その状況がさらに放置されると、折り返しの期間が7年返済だったのが5年に、5年が3年にと徐々に短くなっていって、やがて折り返しが効かなくなる事態に陥ります。
この結果、金融機関各行に返済条件の変更(リスケジュール)を要請せざるを得なくなってしまいます。
中小企業経営者は、損益分岐点ではなく、借入金の元本返済分を加味した利益を確保しなければならないのです。
2 借入金の圧縮が価格競争力を決する
このように、借入金の元本返済額は、中小企業にとっては無視できないコストです。
原材料高、人手不足による人件費増と、中小企業を巡るコストは目先アップする一方です。
このため、借入金の返済原資を確実に確保するためにも、お客様への価格転嫁は待ったなしの経営課題です。
もちろん、同業他社と差別化できるような競争力があれば、お客様も値上げにある程度応じてもらえる余地がありますが、競合が激しい業種、業態であれば、「おたくの代わりは他にあるからね」と反撃されて、「いや、そうおっしゃらずに。単価は今のままで頑張らせて頂きますので」と営業担当者は価格転嫁の交渉のテーブルにも乗せてもらえなくなってしまいます。
今更ながらですが、同業他社との差別化を図れるような会社としての強みを磨き、ビジネスモデルの持久力を高める必要があることは言うまでもありません。
併せて、借入金自体の圧縮も必要です。
長期借入金の月次約定返済を進めることは言うまでもありませんが、リスケジュールが常態化してしまうと、この先見込まれる市場金利の上昇によって、支払利息が収益を圧迫してきます。
借入金、有利子負債の圧縮、適正化も併せて、中小企業にとっては喫緊の課題です。
中小企業経営者は、改めて、借入金の圧縮が価格競争力を決することを肝に銘じて、適正な借入金の水準を目指していくことが必要なのです。