【中小企業の銀行対策】月次損益計画と実績値の乖離の有無を検証する重要さとは?
今日は、中小企業の銀行対策として、月次損益計画と実績値の乖離の有無を検証する重要さについて考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 現進行年度と次年度までの月次損益計画を策定する
2 損益と資金繰りは一体のものである
どうぞ、ご一読下さい。
1 現進行年度と次年度までの月次損益計画を策定する
中小企業経営者であれば、先月がどれだけ売上が立って、経常損益ではどのくらい利益が出て、期末の業績見込みの着地がどうなのかは、大きな関心事です。
しかしながら、多くの中小企業では、試算表から期初からの累計損益を見て、期末の着地はざっとこのくらいかなという業績管理がなされているケースが多いようです。
月次の損益が大きく変動する完成工事ベースで売上高を計上する建設業では、月次の損益計画を立案するのが少々難しいところですが、弊所では、お客様の中小企業にチアして、基本的に、現進行年度と次年度について、月次損益計画と損益に連動する資金繰り表を作成して、実績値と計画値との乖離の有無を検証するようにしています。
計画値の置き方は、ケースバイケースですが、例えば、前年同月実績に対して4%増だとか、直近6ヶ月間の売上高に対する比率で費用を置くだとか、決して恣意的に数字を手打ちすることはいけません。
ルールを設けて、そのルールに従って、逆に言えば、機械的に数字を置いていくことが重要です。
幸いにもエクセルを使えば、大した労力も要らずに、月次損益計画を設定することが可能です。
実際、月次管理をスタートしてみて、実績値が計画値をクリアしていればとりあえず一安心というところですが、実績値が計画値を下回った場合には、下振れした要因を明らかにして、その改善策を当月以降さっさと実行に移すことが重要です。
ちなみに、現進行年度だけではなく、次年度まで月次損益計画を策定する理由は、最長24ヶ月先のことなので、経営者自身が近い将来として、あるべき姿をイメージし易いというのが北出の経験則だからです。
実績値が計画値を下回ってしまえば、早急にその「借金」を返さなければなりませんが、原材料高、人手不足、そして諸経費高の現在なので、「借金」の返済は容易なことではありません。
下振れした要因がうやむやのままで、改善策が実行に移されなければ、「借金」はさらに膨らむばかりです。
計画自体が総崩れになってしまって、経営者のモチベーションを保つことが難しくなってしまいます。
業績が悪化する会社は、いうならば、「借金」が増えていくことに経営者が危機感を感じなくなり、「なるようになる」と開き直ってしまうことが少なくないのです。
経営者のモチベーションが下がれば、従業員の士気も低下して、会社全体のモラルも保たれなくってしまいます。
トイレが汚れていても、誰も掃除をせず、汚れが放置されるようになってしまうと、会社の先行きは長くないのです。
経営者自身が規律を率先して守り、月次損益計画を貪欲に達成していく姿勢を貫くことが重要なのです。
2 損益と資金繰りは一体のものである
次に大切なのが、資金繰り表です。
資金繰り表とは、言い方を変えると、ビジネスモデルをおカネの流れで表現するものです。
なので、月次損益に資金繰り表を連動させて、演算式を機械的に置いていけば大した労力もなく資金繰り表を完成させることができます。
月次損益計画と同様に、恣意的に数字を手打ちするのは御法度です。
エクセルは賢いので、嘘をつくことはありません。
資金繰り表では、発生ベースの損益と実際のキャッシュの流れは一致しないので、仮に、損益計画上では利益が出ていても、一時的に資金ショートが発生することが起きてしまうことがあります。
そのような場合には、早めの段階で、まずはメインバンクに一時的な資金ショートが発生するので、資金の要請を打診することが可能です。
損益では利益が出ているにもかかわらず、入と出とのギャップによって資金ショートが一定程度発生する場合には、短期の当座貸越や手貸の極度枠を設定してもらうこともメインバンクにお願いする必要があるかもしれません。
このように、損益と資金繰りは一体のものです。
中小企業経営者は、財務的に優良企業であったとしても、勘で会社経営を貫くことはもうやめて、月次損益計画と連動した資金繰り表を作成して、月次で会社の成績をしっかりと把握して、改善が必要な場合には然るべき対応をとる必要があるのです。