【中小企業の事業承継対策】最も理想的な事業承継のタイミングとは?

1 財務体質と収益力の強化が事業承継の第一歩である

今日は、中小オーナー企業の最も理想的な事業承継のタイミングについて考えます。
中小オーナー企業の事業承継は非常に悩ましいところです。
創業オーナー社長のジュニアが会社に入社し数年が経過し、特に営業面での柱になっていたとしても、創業オーナー社長は、事業承継が実の子息であったとしても、「俺の会社をそう簡単に任せるわけにはいかん」というのが本音のところです。
実際、創業オーナー社長は、その業歴の中で会社が決して順風満帆な時ばかりではなかったはずで、その都度、苦労を重ね、歯を食いしばって、事業と従業員を守ってきましたので、精神的にも体力的にもまだまだ元気溌剌です。
しかしながら、いくら精神的にも体力的にも元気な創業社長とて、永遠に命があるわけではありません。
もしかしたら、今日、交通事故のような不慮の事故で亡くなってしまうことだってあり得ます。
したがって、事業承継の準備は、相応に時間をかけて、事業承継への地ならしをする必要があります。
事業承継への第一歩は、まずは、安定した財務体質としっかり稼げる収益力の強化です。
安定した内部留保を有しているばかりではなく、現預金も潤沢に持っておきたいところです。
いつでも借りられて返済も任意の当座貸越の枠がなければ、メインバンクに相談して、当座貸越の極度を作ってもらうといざという時の突発的な資金需要に対応できます。
当貸の極度がすでに設定してもらっていたら、極度額の増額も必要です。
少々のことではびくともしないBSの構築はマストです。
資金面だけではなく、毎期しっかりとした利益を叩き出せるような強靭なPLも必須です。
事業承継後もメインバンクとの良好な取引関係を維持・発展させることも重要です。
定量的要素に不安を払拭しなければなりません。
今般の新型コロナウイルス感染拡大のような外部からの脅威にも耐えうるようなBS、PLを築くことが事業承継への第一歩なのです。

2 第二に定性要因、第三に帝王学

定量的な要素をクリアするのと同時に、定性的な懸念事項の排除も必要です。
社歴の長い会社には、いい意味でも悪い意味でも、手垢がついてしまっています。
特に、ジュニアよりもはるかに社歴の長い重鎮やお局が、事業承継後のジュニアに反旗を翻さないとも限りません。
反旗とまでは言わないまでも、「先代はこうやったから、よかったな」などと陰口を囁かない保証はありません。
大番頭のような重鎮や、長年総務経理を牛耳ってきたお局に、何かしらの引導を渡すのは創業社長の役割です。
あるいは、取引先との悪しき商慣習や慣例なども排除しておく必要があるかもしれません。
金融機関に対しては、第三者保証人がそのまま放置してあったり、ジュニアから見れば縁が遠いような人が物上保証人になっていたりすることも散見されます。
既存株主に関しても、少数株主からの株式の買取も必要です。
更に、ある意味で一番大事なのが、ジュニアへ帝王学を授けることです。
いかに、中小企業といっても、ジュニアがトップの座に座れば、ジュニアの仕事は社内に止まりません。
取引先、業界団体、地元の商工会議所等の経済団体ともお付き合いをしていく必要があります。
新たな事業領域の開拓には、異業種との交流も必要です。
それに、何よりも大切なのが、ジュニア自身が、会社を、従業員を、取引先を、時に自らを犠牲にしてでも守り抜くという気概です。
トップとして、会社を率いていくだけの覚悟が問われます。
ジュニアを経営トップにふさわしいような帝王学を授けることが、現世代経営者が果たすべき役割です。
令和のこのご時世、中小企業を取り巻く環境は、厳しさを増すばかりです。
倒産、自主廃業が新規開業を上回る状況が続けば、日本から中小企業が大幅に減少し、産業基盤が揺らいでしまいます。
このように、事業承継に際しては、事業承継を会社が解決すべき喫緊の経営課題と位置付けて、時系列で超えていくべき課題をTo Doリスト化して、着実に進めていく必要があるのです。

【中小企業の事業承継】ローカルルールを廃止しなければならない理由とは?も併せてご一読下さい。

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