【中小企業の銀行対策】コロナ資金で潤沢となった現預金を放置するメリットとリスクとは?
1 コロナ資金の「今」はどうなっている
今日は、コロナ資金で潤沢となった現預金を放置してはいけない理由について考えてみます。
新型コロナウイルス感染拡大からちょうど丸3年が経過しました。
ようやく、マスク着用が任意となり、大阪中心部にはインバウンドを含めた人々が戻ってきました。
2類から5類への移行は、あと2ヶ月近く先ですが、飲食店も活況を呈するようになり、いよいよ、アフターコロナ到来を感じます。
未だ、コロナ資金を引っ張るだけ引っ張って、コロナ特例リスケ、収益力改善計画を経ても、収益改善には道半ばのサービス業も多々ありますが、世の中が落ち着きを取り戻してきているのは間違いありません。
新型コロナウイルス感染拡大初期は、事実上のロックダウンの状態となり、飲食、宿泊といったサービス業だけではなく、様々な業種、業態で売上が前年割れとなりました。
中小企業経営者は皆、疑心暗鬼となり、とにかく事業継続を最優先として現預金を確保するため、コロナ資金を調達しました。
無利子、無保証料も相まって、政府系、民間ともに、どの金融機関もコロナ資金の残高が膨れ上がりました。
そしてあれから3年。
コロナ資金を調達した一定数の中小企業が、「コロナ資金を手をつけずに済んでよかったなあ」。
中小企業経営者とすれば、コロナ禍が落ち着いたとはいえ、現預金は持っておきたいという誘惑に襲われます。
他方で、現預金はほとんど収益を産んでくれません。
未だ、事実上のゼロ金利が続いている中、預金金利は一部の金融機関を除けば現在もほぼゼロの状態です。
余剰の現預金を設備投資などに回して、次の収益拡大につなげていく必要がありますが、上場企業でさえ、敵対的TOBのリスクを抱えながらも潤沢な現預金を保有しているのが現実です。
本来であれば、余剰現預金を保有していることは経営上のリスクになり得るのですが、コロナ禍が落ち着いたとはいえ、未だ、中小企業経営者のマインドは「守備的」のままです。
2 現預金としてとっておくか、はたまた一括返済するか
幸いにも手をつけずに済んだコロナ資金のおカネをこのままとっておくべでしょうか?
仮に、30百万円の民間金融機関のコロナ資金で、元本据置期間3年としていた場合、実質的な返済期間は7年間で、元本返済スタート後の月次返済額は357千円です。
普通に考えると、30百万円のコロナ資金を調達した中小企業であれば、コロナ資金以外の既往借入金の返済もあるはずです。
既往借入金の返済に加えて、コロナ資金の返済が月々357千円上乗せとなります。
さらには、無利子期間も満了するので、元金に加えて、利払負担も加わってきます。
となると、いっそ、現預金は目減りするけれど、一括返済してしまって、元金返済と利払負担を軽減することも検討すべきです。
他方、おそらくメインバンクから調達したであろうコロナ資金を一括返済するとなると、メインバンク担当者の顔色は冴えません。
「え、ホンマに返済されるんですか? ホンマにええんですか?」位のやりとりが当然あるわけです。
民間金融機関としては保証協会100%保証(一般の保証協会の資金は民間金融機関が責任共有分20%を負担するので、100%保証は民間金融機関にとってはおいしい資金なのです)なので、おいそれと「はい、ご返済ですね」とお利口に言うことを聞いてくれません。
また、一括返済した後、近い将来資金需要が発生した際、メインバンクとしては取り組みにくくなることも想定されます。
確かに、一括返済による元本返済と利払負担の軽減効果は大きいものの、一概に一括返済を進めにくいところがあるのも正直なところです。
コロナ資金がもたらした余剰現預金を、攻めの投資(例えば広告宣伝の強化とか、新規顧客開拓の推進)の原資として活用することも検討すべきかもしれません。
このように、コロナ資金による余剰現預金をどうするのかについて、それぞれ、メリットとリスクがあります。
中小企業経営者は、一度、メインバンク担当者と余剰となっている現預金について、議論をする機会を持ってみてはいかがでしょう。