【中小企業の銀行対策】地方卸の生き残り策とは?
1 メーカーが直販を本気でやり始めた
今日は、地方卸の生き残り策について考えてみます。
かつての様々な商品、製品のサプライチェーンには、メーカーが製造して、卸がメーカーから製品を仕入れて、卸が小売に製品を供給するという構図がありました。
特に、地方においては、大消費地と違って、首都圏や関西圏からの距離をカバーするべく、メーカーに替わって卸がきめ細やかな動きをして、小売のニーズに応えてきました。
小売からの「ちょっと急ぎて持ってきてくれへんかな」という無茶振りに卸が対応するため、卸はガッツリと在庫を持っていました。
ところが、令和の現状では、地方卸のプレゼンスはかつての威光を失っています。
在庫を持ちたがらない小売は、一部では宅配便を使って小ロットで商品を仕入れます。
川下の小売は地場の商店が相次いで姿を消し、全国津々浦々まで大手小売が店舗を構えます。
挙句の果てには、メーカーがオンラインや通販を通じて、一般消費者向けに直販を行うようになりました。
地方卸パッシングが横行して、地方卸パッシングの勢いはますます強まる一方です。
地方卸は、メーカーからの圧力が強まる一方で、小売各社からの値下げ要請が強まるばかりなので、地方卸の経営体力は弱体化し、在庫を大量に保有する資金的な余力が失われています。
場合によっては、地方卸が経営改善が必要な状況となっていて、創業当初から蓄積してきた内部留保を取り崩す有様です。
地方卸への逆風は今後ますます強まる気配です。
2 地方卸に生き残り策はあるのか?
このように、地方卸にとっての外部環境は厳しさを増す一方ですが、地方卸の側からすると、やられっぱなしではいけません。
従業員の雇用を守り、お客様のニーズに応えるため、今までの旧態依然のやり方にスパイスを加える必要があります。
地方卸の最大の強みは、「お客様の顔が見えている」ことです。
「●◯スーパーの▲△店長は、いつも小難しい顔をしているけれど、実は鹿児島の芋焼酎が好きで、芋焼酎の話題になると途端に機嫌が良くなる」という類の他愛もないけれど、現場の担当者のみが知る貴重な定性情報で、そのような定性情報が売上維持に貢献します。
ベタッとしているけれど、人対人の信頼関係をAIが代替することは不可能です。
あるいは、1掛け2掛け3掛けの6時産業的な他業種横断型の商品やサービスの提案も重要です。
6時産業的な新商品やサービスを売っていくためにも、地方卸が持っている営業力は有効です。
地方卸側とすると、「うちが責任持って全量販売するのでご安心下さい」という位の経営者サイドの覚悟が必要です。
このような他業種横断型の商品やサービスの提案こそ、経営者がトップセールスでまとめ切らねばなりません。
卸としての強力な営業力があれば、商品やサービスがなんであろうと、売り切ることができるはずです。
このように、地方卸の実力は「強力な営業力」に尽きます。
さらには、新商品やサービスの展開に当たって、新たなビジネスパートナーの紹介をメインバンクにお願いすることも効果的です。
今時の金融機関は融資拡大だけではなく、ビジネスマッチングにも力を入れています。
新規取引の見込み先にアプローチしても、一見で商談にまで漕ぎ着けるのは容易なことではありませんが、金融機関からのご紹介となれば、見込み先の相手もむげに断ることはありません。
このように、常日頃から、特にメインバンクとの信頼関係を構築しておくことによって、ビジネスマッチングに繋がりやすくなります。
中小企業経営者は、地方卸に限らず、メインバンクを上手に使いつつ、これまでの旧態依然とした商売のスタイルを聖域なく見直し、ビジネスモデルを革新し続けていくことが必要なのです。