【中小企業の銀行対策】リスケジュールからの脱却が想像以上に険しい理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、リスケジュールからの脱却が想像以上に険しい理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 リスケの入り口は優しい
2 実態ベースでの債務超過の解消が鍵となる
どうぞ、ご一読下さい
1 リスケの入り口は優しい
2009年12月に施行された中小企業金融円滑化法は、とうの昔に期限切れとなりましたが、依然として、リスケジュール状態にある中小企業・小規模事業者の数は相当数にのぼることが想像されます。
実際、金融機関は、行政庁から債務者から返済条件の緩和の要請があれば柔軟に対応するよう、金融機関に求めていて、反社にかかるような会社でない限り、よほどの事情がない限り、債務者中小企業側から要請された事業継続を最優先とするためのリスケジュールが謝絶されるようなことは起こり得ないというのが現状です。
確かに、新型コロナウイルスの影響は収束しましたが、原材料高、人手不足、諸経費アップが中小企業の収益圧迫要因となっている現状では、事業継続を最優先させるため、金融機関へ元本返済のリスケジュールを要請するような経営判断に至る中小企業・小規模事業者は少なからず存在するのです。
債務者中小企業側がリスケジュールを要請する際には、リスケジュールによって資金ショートを回避できることを示すことができる資金繰り表を金融機関に提出することが必要です。
逆に言えば、リスケジュールに踏み切っても、資金ショートが回避できないのであれば、リスケジュールに踏み切る合理的な理由がありません。
加えて、リスケジュールに踏み切ってしまうと、原則、ニューマネーの調達はできなくなってしまうので、リスケジュール後は、自己資金で経常運転資金を賄うことが必要です。
このように、リスケジュールの入り口は、比較的イージーで、優しいと言えますが、実のところ、リスケジュールに踏み切った後、経営改善を進めて、リファイナンスを実現していくことへのハードルが現実的にはか相当程度高いのです。
経営改善を進めて、リファイナンスを実現していくことについて、次のチャプターで掘り下げていきます。
2 実態ベースでの債務超過の解消が鍵となる
リスケジュールで元本返済の条件変更を行なったからと言って、中小企業経営者は、ここで安心してはいけません。
むしろ、闘いはそこがスタートラインです。
借入金は資本性のものを除けば、返済していかなければなりません。
借入金は、補助金や助成金とは違います。
このため、リスケジュールで一旦、返済を止めた後、経営改善を進めて、失われたキャッシュフローを創出して返済を再開、増額していって、リファイナンス(概ね返済期間10年間)を実現していかなければなりません。
また、貸借対照表(BS)も、簿価ベースではなく、実態ベースで債務超過であれば、実質債務超過を解消することもリファイナンスの要件です。
リファイナンスに足るキャッシュフローを創出するための収益改善と実態ベースでBSを健全化させることを目的とした経営改善計画を策定する必要があります。
経営改善計画の中で明確化したアクションプランを実行に移して、債権者である取引金融機関に月次で業況報告(モニタリング)を実施することも肝要です。
多くのケースで、一旦リスケジュールをしてしまうと、返済を再開して、返済額を増額していくことは困難がつきまといます。
実際にリスケジュールに踏み切ると、返済負担がないため、資金が回るようになると、中小企業経営者の中には、「もうこのままでええんと違うか」と経営改善へのモチベーションを保つことができなくなることも無きにしもあらずです。
このように、リスケジュールの入り口は優しく、イージーなのですが、リスケジュールを解消するための出口への道筋はかなり険しいのです。
中小企業経営者は、安易にリスケジュールに踏み切るのではなく、収益を改善し、金融機関への元本返済に足るキャッシュフローを創出するための経営努力を継続する必要があるのです。