【中小企業の銀行対策】金融機関のいう「コンプライアンス」との理想的な付き合い方とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、金融機関のいう「コンプライアンス」との理想的な付き合い方について考えてみます。
今日の論点は以下の2点。
1 金融機関は依然として強烈な行政指導下で仕事をしている
2 金融機関のいう「コンプライアンス」には可能な限りお付き合いすべきである
どうぞご一読下さい。
1 金融機関は依然として強烈な行政指導下で仕事をしている
わが国では、様々な業種や業態で行政指導や行政からの許認可などで仕事が成り立っているケースが多くあります。
建設業や公共交通機関の国交省、医療や介護の厚労省などなどが行政指導や行政からの許認可業務として頭に浮かびますが、もしかすると、最も行政指導が効いている業界が金融庁、財務省地方財務局からの金融機関なのかもしれません。
かつて、金融行政は、旧大蔵省銀行局が各金融機関に絶大な権限を有していました。
大蔵省検査と日銀考査は金融機関にとって大きな負担となっていました。
金融機関営業店の出店に際して大蔵省銀行局の許可が必要であった他、大蔵省検査での金融機関営業店への臨店時に、窓口が多忙で検査に支障があるとなれば、営業時間中であっても、検査官はシャッター閉鎖を指示することができたほどです。
その後、ノーパンしゃぶしゃぶに代表される金融機関のMOF担による検査局への過剰な接待攻勢が白日のもとにさらされたことで、旧大蔵省は現在の財務省と金融庁に分離されました。
平成の世に長銀、日債銀が破綻、りそなや足利が公的管理となりましたが、令和の時代となり、金融機関の自己査定をガチガチに縛ってきた金融検査マニュアルは廃止され、金融機関の経営は自己責任という建前となりました。
しかしながら、北出の肌感覚からすると、依然として、金融機関は金融庁、財務省地方財務局の顔色をうかがって仕事をしています。
金融機関は依然として、強烈な行政指導下で仕事をしているのです。
2 金融機関のいう「コンプライアンス」には可能な限りお付き合いすべきである
それでは、金融機関は、陰に陽に存在する行政指導に対して、どのような点に神経質になっているのでしょうか、考えてみることにします。
長年にわたる不良債権処理が一段落したことで、わが国では表立って金融不安は顕在化していません。
また、不良債権処理の断行と、より保守的な(厳しい目線)資産査定(自己査定)によって、貸倒引当金を十分積んできたことからも、大多数の金融機関の貸出債権は健全性を維持できています。
つまり、不良債権問題で金融機関が潰れそう、というようなフェイズから金融機関は脱しているということが言えます。
他方、リスクが高い(あるいはリスク自体が見えていない)ような債券や金融商品で余剰資金を運用している場合の資金運用の健全性(リーマンショック時のサブプライムローン商品のようなものが含まれていないか)がより問われています。
さらに、重要視されているのが、「反社会性力への加担の有無」です。
第三者名義の普通預金口座が特殊詐欺に使用されているようなケースが悪質な例の一つです。
このように、金融機関のいう「コンプライアンス」の大きな柱が、資金運用に関する経営の健全性と反社会的勢力との決別ということに集約されます。
では、これらを踏まえて、中小企業経営者は、金融機関のコンプライアンスにどのように対応すべきでしょうか?
この答えを一言で申し上げるのであれば、金融機関のコンプライアンスには「全面協力」すべきです。
なぜならば、大多数の中小企業は、赤字であったり債務超過であったりするにせよ、「真面目に商売をやっている」からです。
もっと言えば、ほとんどの中小企業にとっては、金融機関の余剰資金の資金運用に関与していませんし、ましてや反社会的勢力との付き合いも全くないからです。
中小企業経営者は、「もう、また銀行がコンプライアンス、コンプライアンスてうるさいことばっかり言うてる」とムカつくことなく、当たり前のことですが、金融機関に対して「うちの会社は真面目な会社で、真っ当に商売している」ことから「コンプライアンスには全面的に協力させてもらいます」という具合に、直球勝負で対応してあげましょう。