【中小企業の銀行対策】貸借対照表の左側が会社の命運を左右する理由とは?
1 金融機関目線は、BS70%、PL30%である
今日は、中小企業の決算書あるいは試算表の貸借対照表( BS)の左側(借方)のお話をします。
一般的に決算書や試算表を前にして、一番最初の関心事が損益計算書(PL)です。
単純に、儲かっているか、損が出ているかを知ることができるので、良い会社か、そうでない会社なのかを把握するのに一番の近道です。
ただし、金融機関の審査の目線は、むしろPLよりもBSに注がれます。
その理由は、金融機関が融資をする(与信を供与する)のに当たって、重要な視点が「安全性」であるからに他なりません。
わかりやすく言えば、BSが健全(資産が負債を実質ベースで大きく上回る状況)であれば一時的な赤字はどうってことはありません。
しかし、仮に、経営改善が進んで、直近3期連続がPLで利益が出ていたとしえても、BSが痛んでいる(簿価ベースではなく、実質ベースで債務超過)のであれば、金融機関としては、新規や追加の与信に取り組むことが非常に難しくなります。
それほどまでに、金融機関としてはBSをより重視します。
肌感覚としては、金融機関審査の目線はBS 7割、PL3割というところです。
月次の試算表でも、ましてや決算書でも、中小企業経営者は、会計事務所とBSの健全性が保たれているかについて、しっかりと詰める必要があります。
中小企業経営者は、BSに徹底的にこだわらないといけません。
2 BSを身綺麗にすることにこだわる
次は、BSの中身について考えてみます。
そもそも、BSの左側、つまり資産の部は、上から順番に「換金性が高い」順番に並んでいます。
現預金は当たり前に現ナマです。
社長向けの使途不明金が現金のまま計上されている中小企業も北出の経験則上、少なからず存在します。
存在しない現金が計上されているケースでは、故意か過失かを問わず、場合によっては「粉飾決算やないか!」と指摘されても仕方がなくなります。
現金は文字通り、「現物」なので、現金出納帳による日々の算当が必須です。
売掛金も、長期滞留債権や貸倒となっている未収入金がない限り、順次現ナマに変わっていきます。
在庫も、不良在庫でない限り、遠くない将来、売掛金に変わり最終現ナマに生まれ変わります。
固定資産についても、製造業であれば工場の社屋が「建物」、機械は「機械設備」なので、それ自体、不良資産ではありませんが、資産の部の下の方、有形固定資産よりも無形固定資産、投資等、更に、繰延資産と現金化が難しくなります。
問題となる勘定科目は、例えば、社長向けの貸付金や仮払金で、社長個人の資力からすると、会社からみれば回収不能となる可能性があれば、不健全な資産となってしまいます。
前払費用についても、信用保証協会への前払信用保証料や前払の賃借料、クルマのリサイクル預託金以外が前払費用として計上されていれば、怪しい資産と見做されてしまいます。
また取引先の株式を協力会の持ち株買いで保有している場合で、上場株式であれば、時価があるので、含み損益を加味する必要が出てくるかもしれません。
BSの左側が、金融機関が与信を判断するための重要なファクターです。
中小企業経営者は、パッと見で注目しがちなPLの評価は当たり前として、自社のBSが身綺麗に保たれているかについて日々点検を怠ってはならないのです。