【中小企業の銀行対策】2023年9月中間期ディスクロージャー誌から垣間見えるメインバンクの健全度とは?

今日は、中小企業の銀行対策として、2023年9月半期のディスクロージャー誌から垣間見えるメインバンクの健全度について考えます。

今日の論点は、以下の2点。

1 最大の注目点はメインバンクが保有する投資有価証券の含み損益
2 長期金利上昇が低預貸率の地域金融機関のアキレス腱になる

どうぞ、ご一読下さい。

 

1 最大の注目点はメインバンクが保有する投資有価証券の含み損益

2023年も11月月末寸前となりました。
今年も残り1ヶ月。
いやはや、年々、時の経つのが早くなっていきます。
歳のせいでしょうか。

ちょうど、このタイミングで、各金融機関の2023年9月中間期ディスクロージャー誌が開示されます。
ディスクロージャー誌は、金融機関の店頭に備え付けられていて、誰でも閲覧できる他、金融機関の公式サイトでも公表されます。

北出は、中小企業の資金繰り・銀行対策コンサルタントですので、地方銀行以下の地域金融機関が受ける「長期金利の動向」の影響について、掘り下げてみます。

「長期金利の動向」とは、主に、10年ものの日本国債(JGB)の価格の推移です。
地域金融機関の預貸率(「融資残高」÷「預金残高」×100)で計算されるものですが、この預貸率が低い金融機関は、集めた預金を十分貸出に回すことができていません。
預貸率の低い金融機関は、いわば「在庫」となっているお金を金庫の中で札束のまま眠らせておくと、何の収益も産まないので、上部金融機関へ預け金として預入したり、JGBの他、事業会社が発行する社債や電力会社が起債する電力債等を買って、資金運用しています。

2023年4月から9月までの6ヶ月間で、金融機関を巡る経営環境の中で、劇的に変化したものが「長期金利の動向」です。
「長期金利の動向」というと、まるで、著名なエコノミストが書いた記事のようですが、ここでは、地域金融機関に及んでいる長期金利の上昇について掘り下げます。

長期金利の動向について、わかりやすいように、簡単なモデルで説明します。

額面100円の債券で仮に年間1円のクーポンがついていると仮定すると、表面利率は年率1.000%となります。
ところが、債券は毎日債券市場で売買され価格が変動します。
株式よりも一般的にリスクが小さいとされる債券に投資家からの人気が集まると、額面100円の債券の時価は105円にまで上昇することがあります。
この場合、年間1円のクーポンは動かないので、実質的な利回りは0.952%(=1/105)に低下します。
安倍政権下でマイナス金利が常態化していたため、債券への投資家の人気は高く、債券価格は強含みで、同時に実質的な利回りは低い状態が続いていました。

ところが、2023年4月から9月までの半年間で、債券市場の動向は激変しました。
先ほどのわかりやすいモデルでさらに説明をすると、長期金利上昇が見えてきたことで、機関投資家は保有していた債権を手仕舞いし始めました。
額面100円の時価ベースの債券価格は95円にまで下落してしまうと、実質利回りは1.053%(=1/95)に上昇します。
黒田日銀総裁時代には、債券は安定資産と位置付けられたことで、預貸率の低い地域金融機関は、機関投資家よろしく、債券を買い進めました。

この結果、先ほどのモデルで言えば、105円で買った(取得原価)債券の時価が95円にまで下落したことで、10円もの含み損を抱えてしまうということが起こり得るのです。

地域金融機関の2023年9月中間期ディスクロージャー誌に話を戻すと、保有している投資有価証券の評価損益についてしっかりと記載してあります。
メガバンクや資金運用に長けた地域金融機関は、長期金利の上昇を見越して、レンジの長い債権を早い段階から手放して、ショートレンジの債権投資に舵を切っています。
資金運用に長けた金融機関は、先手先手でリスクヘッジを行っている一方で、資金運用部門に日参してくる証券会社の営業担当の言いなりで資金運用ノウハウに乏しい地域金融機関は、投資有価証券の含み損が拡大する一方です。
同じ地域金融機関でもその差は徐々に開きつつあります。

中小企業経営者は、自社のメインバンクが保有している投資有価証券の含み損益がプラスなのか、マイナスなのか、把握しておく必要があります。

2 長期金利上昇が低預貸率の地域金融機関のアキレス腱になる

中小企業経営者の中では、「メインバンクが持ってる債券の損得なんか、うちには関係あらへんがな」とおっしゃる方がいるかもしれません。
ところが、そういうわけにはいかないのです。

長期金利の上昇がもたらす地域金融機関が保有する投資有価証券の含み損は、直近の決算に直接の影響を与えることはありません。
しかしながら、含み損を抱えた債券は、順次満期を迎えてきます。
中には、今期(2024年3月期)末までに満期を迎えるものもあれば、満期が5年後のものも混在しています。

含み損を時価評価しない地域金融機関は、含み損を抱えた債券が満期を迎える度に、投資有価証券売却損や除却損を計上し続けることになります。
いわば、信管を抜けない時限爆弾を抱えているのと同じことなので、投資有価証券の含み損が将来に渡って、地域金融機関の財務を圧迫し続けることになります。
いくら、直近の自己資本比率が国内基準4%を大きく上回る10%といっていても、実態ベースの実質自己資本比率は2023年9月末時点の公表数値を下回ってしまいます。

投資有価証券に含み損を抱えたままの地域金融機関は、国内基準自己資本を維持するため、リスクマネーを回収し総資産を圧縮しようとします。
リスクマネーを回収し総資産を圧縮することは、すなわち、かつての貸し渋り、貸しはがしを再現させかねません。
このような地域金融機関をメインバンクとしている中小企業は、必要な資金調達にも支障が出かねないことが懸念されるのです。
中小企業経営者として、無視できるようなリスク要因では決してありません。

誤解を与えてしまうといけませんので申し上げるのですが。長期金利上昇局面でも、タイムリーに運用ポリシーを変えることで、投資有価証券に十分な含み益がある地域金融機関もたくさんあります。

中小企業経営者は、メインバンクの投資有価証券の含み損益を把握することでメインバンクの健全性を認識した上で、自らの会社を守るためにも、財務基盤が盤石な金融機関をメインバンクとして選択していく必要があるのです。

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