【中小企業経営者の心得】「悪い値上げ」と「良い値上げ」との違いとは?
今日は、中小企業経営者の心得として、「悪い値上げ」と「良い値上げ」との違いについて考えます。
今日の論点は、以下の2点。
1 「悪い値上げ」と「良い値上げ」とは何が違うのか
2 「良い値上げ」はお客様の共感を得ることである
どうぞ、ご一読下さい。
1 「悪い値上げ」と「良い値上げ」とは何が違うのか
アフターコロナになって、絶対需要の高まりと円安による輸入物価の上昇によって、何から何まで値上げラッシュです。
外食産業大手の一部では、一旦値上げした商品の一部を値下げするような動きが見られますが、中小企業のほとんどは、値上げが後追いになっていて、価格転嫁が不十分な状況に置かれています。
北出は、お客様の会社を見ていて、つくづく感じるのが、一言で「値上げ」といっても、「悪い値上げ」と「良い値上げ」の2種類があるように感じています。
「悪い値上げ」と「良い値上げ」とは何が違うのでしょうか。
北出の勝手な所見ですが、「悪い値上げ」とは、コスト上昇分を単純に価格転嫁していることを指すと考えています。
具体的には、商品やサービスの内容が全く同じであるにもかかわらず、価格だけが上がっているケースがその例です。
ここ数日前に報道された郵便料金の値上げがその最たるものです。
封書や葉書が、配送元の郵便局で仕分けられ、基幹路線は大型の10トントラックで運ばれ、配送先の郵便局でまた仕分けられて、郵便配達員によって、会社や個人宅に運ばれるわけですが、郵便は文字通り、右から左の単純なモノの移動なので、付加価値が付きません。
サービス内容とビジネスモデルに変化がないにもかかわらず、単純に燃料代や人件費分を転嫁して値上げするのは、「悪い値上げ」そのものです。
かつての旧国鉄がリストラで電車の本数を減便したにもかからず、運賃価格を引き上げたのと同じです。
旧国鉄の「悪い値上げ」が旧国鉄の解体に繋がり、分割民営化に進んでいったことを、中小企業経営者は念頭におかねばなりません。
安かろう、悪かろうで、質より量を追求するようなビジネスモデルが限界に来ていることも、「悪い値上げ」と密接に関連しています。
他方、値上げを期に、お客様毎にきめ細かいサービスを提供することで、お客様の満足度を上げ、気持ちよくおカネをお支払い頂くのは、「良い値上げ」です。
とはいえ、「良い値上げ」を実践するのは、そう容易なことではありません。
従業員の意識改革や教育研修も必須です。
全ての中小企業、小規模事業者が「良い値上げ」ができるわけでは決してないのです。
2 「良い値上げ」はお客様の共感を得ることである
中小企業経営者であれば、同じように値上げをするのであれば、「悪い値上げ」ではなく「良い値上げ」にしたいと考えるのは当然で、それが人情です。
少なくとも、コスト上昇分の価格転嫁であったとしても、お客様に対しては「良い値上げ」と受け止めて欲しいというのが、中小企業経営者の本音です。
「良い値上げ」であることをお客様に実感していただくために、真に必要なことはなんでしょうか。
一言でいえば、お客様の共感を得ること、これに尽きます。
「わたしのためにここまでやって下さるんや」とお客様に実感して頂ければ、しめたものです。
このように、お客様に共感を得て頂くことができれば、10%、20%の値上げもお客様には気にならなくなります。
サービス業だけではなく、例えば、製造業であれば、当たり前のことですが、品質と納期を今まで以上に遵守することで、メーカーの購買部から共感を得ることができるはずです。
建築業であれば、一般施主さんの痒いところに手を届くような一手間をかけることで、「ありがたや」と一般施主さんの満足度は間違いなく上がります。
値上げに限らず、自社のファンになって頂いて、リピートしてもらえるようになるには、お客様からの共感が必要不可欠です。
業種、業態によって、「良い値上げ」の形は様々です。
しかしながら、値上げというお客様に負荷をかけるのにあたって、値上げを「良い値上げ」にするためにも、これまで以上に、お客様からの共感を得ることに注力しなければならないのは明白です。
中小企業経営者は、値上げを「良い値上げ」にすることで、値上げをチャンスと捉えて、お客様からの共感を得るため、全社を挙げて必要な施策に取り組む必要があるのです。