【中小企業経営者の心得】書面で仕事をする文化を会社に根付かせる必要性とは?
今日は、中小企業経営者の心得として、書面で仕事をする文化を会社に根付かせる必要性について考えます。
今日の論点は、以下の2点。
1 取引金融機関は打ち合わせ内容をメモにしている
2 言った言わないのトラブルを防ぐ
どうぞ、ご一読下さい。
1 取引金融機関は打ち合わせ内容をメモにしている
中小企業、中でも、小規模事業者の場合、経営者と従業員との距離が近く、信頼関係も構築されているため、会社の中では、往々にして、阿吽の呼吸でコミュニケーションをとっているケースが多く見受けられます。
従業員:「社長、明日、うちの子供の会社の行事があって、午後半休取らせてもらえないでしょうか?」
社長:「おお、ええよ。しっかりお父さん、してくるんやで」
なんとも、微笑ましい社内コミュニケーションで、大企業とは違った大家族主義的なおおらかさを感じます。
一方、大企業、中小企業にとって身近な存在である金融機関の場合、人事異動が定期的に発動されることと、交渉プロセスの明確化のため、打ち合わせ内容はメモで残されていて、人事異動後、新しい担当者が着任した後でも、以前のやりとりをメモで再現することができ、従前からの取引経過も客観的に把握できるように、配慮がされています。
基本的に、金融機関の場合、組織の根本が「性悪説」で、多くの中小企業が「性善説」を前提にしていること自体、組織の風土は真逆と言っても過言ではありません。
金融機関は、役職員が不正をするかもしれないという前提で、検査部による検査や、金融庁検査や日銀考査が実施されます。
実際、金融機関では、オンライン化が進み、外回りの担当者も携帯端末やタブレッドを携行して、日々の営業活動が詳かになっているにもかかわらず、いまだに、「顧客の預金を着服した」という類の報道が後を断ちません。
もちろん、金融機関は、そもそもおカネを取り扱っているので、そのような不祥事が発生するのかもしれませんが、北出の経験則上、性善説を前提としているはずの中小企業でも、営業担当者が集金してきた売掛金を着服したり、レジの一万円札を抜いたり、現金商売の中小企業でも、この手の不祥事は散見されます。
なので、中小企業経営者自身が性善説にこだわりたいという希望を持っていたとしても、金融機関に倣って、メモに残したりして、何事も書面で残す文化を会社の中で、浸透させる必要がありそうです。
2 言った言わないのトラブルを防ぐ
社内外を問わず、打ち合わせ内容などを、メモにして残しておくことは極めて重要です。
特に、最近では、社内の場合、労務に関する紛争となってしまうと、会社にとって不利な争いを強いられてしまいます。
社外でも、取引先との間で、お互いのちょっとした認識の差で、トラブルにならないとも限りません。
結局のところ、録音音声でもない限り、言った言わないでトラブった場合は収まりがつきにくくなります。
しかし、メモがあることによって、客観的な証に近いものを相手に提示できるかもしれません。
また、メモがなく、口頭だけで担当者が対応していた場合で、その担当者が退社した際には、新たな担当者は、以前、どのような交渉がなされていたのかを把握することもできません。
言った言わないのトラブルは、会社としては、絶対に避けるべきですが、特に、取引先との商談については、原価高、人件費の高騰など収益圧迫要因が増大してくると、営業や購買といった現場に経営側からのプレッシャーが強まります。
今までなんとなくスルーできてきたことが、粗探しではないけれど、「ここをついて、もう一段のコストカットを要求してみよう」のような購買部長が出てこないとも限りません。
円安の進行、金利の上昇共に、中小企業の業績にはマイナス要因ばかりです。
こうした難しい局面だからこそ、中小企業経営者は、会社を挙げて、可能な限り、メモなりで、記録を残して、言った言わないのトラブルを回避するための経営努力が必要なのです。