【中小企業の銀行対策】金融機関の人事異動の季節を前に心得ておくべきこととは?
今日は、中小企業の銀行対策として、金融機関の人事異動の季節を前に心得ておくべきことについて考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 金融機関の定期人事異動は年3回と心得る
2 現担当者との信頼関係を可能な限り構築する
どうぞ、ご一読下さい。
1 金融機関の定期人事異動は年3回と心得る
9月ももう半ば、まだまだ暑い中ですが、4月年度始め、翌年3月末を年度末とする金融機関は、9月末で第2四半期を終えるタイミングです。
中小企業にとって馴染みの薄いかもしれない人事異動ですが、金融機関では、定期的に人事異動を実施しています。
人事異動は、概ね、どの金融機関でも年度始めの4月1日付、第3四半期スタートの10月1日に行われることが多く、また、定時株主総会や定時総代会(信金や信組の場合)の後の7月1日付で人事異動が発令されることがあります。
金融機関の人事異動の目的は、様々な業務を経験することでゼネラリスト、あるいはスペシャリストとして、組織の中で活躍する場をもたらすことが建前ですが、先だってのメガバンクでの貸金庫内の盗難事件のように、不正を防止する目的で行われる側面もあります。
また、特に、取引先との必要以上の癒着を防ぐためにも、部店長クラス(支店長クラス)で2〜3年程度、担当者クラスでも、長くて5年程度で本部組織や営業店に移っていくのが通常です。
新型コロナウイルス感染症拡大期には、人事異動が手控えられた傾向が見受けられましたが、人事異動のペースはほぼコロナ前に戻っていると言えます。
10月を前にした今の季節は、金融機関の役職員は、心の中で、「俺もいよいよ10月にかもしれない」とザワザワ感が募るものです。
特に、メガバンクや商工中金などは、全国展開の金融機関なので、大阪から九州へとか、大阪から東京の本部部署へといった転居を伴う人事異動も珍しくないのです。
また組織の中で、部署によって暗黙の序列があったりすると、人事通達を見た同期の間では「あいつ、なんかでドジ踏んだらしい。これでもう中枢には戻ってこれへんな」と左遷人事が噂されたりします。
中小企業経営者も大変な仕事ですが、金融機関役職員もコンプライアンスばかりなので、なかなかのプレッシャーの中で仕事をしているのです。

2 現担当者との信頼関係を可能な限り構築する
金融機関担当者自身、ぼちぼち「異動かな」と覚悟が決まってくるものです。
弊所では、お客様の中小企業の取引金融機関担当者とのモニタリングに同席させて頂いていますが、担当者と人間関係ができてくると、「〇〇さん、だいぶ、この店も長くなってきましね。もう何年になるんでしたっけ?」と北出はわざと質問するのですが、「いや、僕ももう4年半なんですよ。もしかすると次の異動で声が掛かるかもしれません」。
確かに、担当者ベースでも4年半は長い。
人事異動に際しては、融資先について、旧担当者が新担当者に引き継ぎを行います。
新担当者への引き継ぎに際して、良い材料はあまり触れられませんが、悪い材料は必ず、引き継がれると中小企業経営者は心得ておくべきことです。
「あの社長には、気をつけた方がええですよ」。
これだけは、必ず引き継がれます。
「あの社長には、気をつけた方がええですよ」とレッテルを貼られると、新担当者とは最初からネガティブなイメージを持たれてしまいます。
このため、取引金融機関担当者の在任期間が4年を超えてきて、いつ人事異動が発令されても不思議ではないケースほど、取引金融機関担当者との密な信頼関係を構築することが肝要です。
中小企業経営者としては、取引金融機関担当者を選ぶことはできません。
いきなり、役席者や次席(次長や副支店長)に直接電話を入れて、「今度のあの担当、ムカつくので、さっさと交代させてもらえないですかね」という類のクレームを入れることは厳に慎まなければなりません。
それこそ、長年にわたって、「あの社長には気をつけとけよ」と引き継ぎ続けられるのがオチです。
中小企業経営者は、取引金融機関担当者との信頼関係構築に、日々努める必要があるのです。