【中小企業経営者の心得】倒産と廃業との根本的な違いとは?
今日は、中小企業経営者の心得として、倒産と廃業との根本的な違いについて考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 近時廃業が増加の一途を辿っている
2 倒産とは外圧に潰されることである
どうぞ、ご一読下さい。
1 近時廃業が増加の一途を辿っている
世の中では、高齢化が深刻な問題として日々マスコミ等にて取り上げられています。
高齢化は、日本全体だけではなく、オーナー社長も同時に高齢化しています。
バブル期、1990年代初頭に会社の中でトップセールスマンであった凄腕営業マンが30歳で会社を興して独立したケースが多くありましたが、その元凄腕営業マンも、60代半ばに差し掛かっています。
なるほど、オーナー社長の高齢化は深刻なはずです。
帝国データバンクによれば、2024年の廃業件数は約69千社で、前年比約17%増で過去最高、これに対して、同社によれば、倒産件数は約9.9千社となっていて、実に廃業件数は倒産件数の約7倍に達しています。
廃業と倒産を合算した約79千社が世の中から消滅していることになる(倒産には民事再生、会社更生の両手続きによる事業継続型倒産もあるが倒産件数の中では少数派である)わけです。
一方、これは非常に興味深いのですが、全国で150千社の会社が新たに設立されていて、その要因として、会社を定年退職もしくは早期希望退職をして、第二の人生として起業していることが挙げられるようです。
話は廃業に戻りますが、新規設立の会社がある一方で、廃業となる会社が相当数に及んでいることは無視できない我が国の現実です。
廃業に踏み切った会社には、取引先が現に存在して、従業員の雇用もあるわけです。
オーナー社長の高齢化と廃業件数増加は、一定の相関関係があることは否めないのです。

2 倒産とは外圧に潰されることである
次に、倒産と廃業との根本的な違いについて掘り下げていきます。
そもそも、倒産と廃業とは大きな違いがあります。
廃業とは「自主廃業」ともいうのですが、文字通り、「当社の都合で商いを手仕舞いさせて頂きます」ということです。
オーナー社長からすれば、ほぼ自らの分身とも言える会社を「自主廃業」とするからには、それ相応の事情があってしかるべきです。
それ相応の事情の筆頭格が、「後継者難」です。
仮に、オーナー社長に3人の子供がいても、3人が三姉妹で、嫁いでしまって家業を継ぐつもりもなく、ムコさんも大手企業のサラリーマンであれば、オーナー社長は、不本意ながらも「俺の代でおしまいにしよう」となってしまうのはやむをえない面もあります。
別に資金繰りに支障があるわけでもないので、半年後を目途として会社を廃業することを取引先にお知らせをし、取引先に迷惑をかけることなく十分な配慮をしつつ、同時に、これまで会社に尽くしてくれた従業員が路頭に迷わないような再就職先のお世話もしなければなりません。
あくまでも、廃業は会社とオーナー社長の「自己都合」なのです。
翻って倒産の場合にはそうはいきません。
倒産に至る要因はいくつか挙げられますが、例えば、取引金融機関から継続的な支援を得られることができず資金繰りの目処が立たなくなったことなどがその筆頭格です。
あるいは、会社の不祥事が明るみに出て、取引先から取引の解消を強行されるようなことも考えられます。
つまり、倒産とは、自己都合ではなく、外圧に潰されるような形で事業継続が不可能となることを言うのです。
他方、自主廃業については、件数として増勢となっていますが、現に、取引先や従業員がいるだけではなく、会社として資金面での不安がなければ、株式譲渡を前提として、社長仲間へのM&Aを模索したり、ブティックと言われるM&A仲介業者を通じて買い手を選定することも排除すべきではありません。
ただ、円滑な株式譲渡を実現するためにも、健全な銀行取引が大前提となります。
事業承継もさることながら、オーナー社長として、健全な銀行取引を常に維持する必要があるのです。
何より、オーナー社長の都合で、会社を畳んでしまうというのは、経営者として無責任ですし、今まで築いてきたレガシーを捨て去ってしまうこと自体、極めてもったいないことです。
オーナーチェンジがあったとしても、事業が残り雇用が継続され、しかるべき新オーナーさんに経営を任せることは決して恥ずかしいことではないのです。
中小企業経営者は、自社を次世代に残していくためにできることはやり尽くすことが必要なのです。
公式サイト「子息・子女までの次世代に残せる中小企業の創造」もご一読下さい。
資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へもご覧下さい。
