【中小企業の銀行対策】「現金過不足」勘定が計上されていない決算書が信用ならない理由とは?

1 現金の管理コストは高くなる一方だ

昨日に引き続いて、決算書や試算表の勘定科目別のネタです。
小売業や飲食業といった所謂、現金商売では、昔から即日現金回収が当たり前でした。
特に関西では、まだまだ現金への信仰が強いと言われていて、現に、まだまだ千円札を出す人、小銭をジャラジャラさせる人が散見されます。
一方、最近では、電子マネー全盛となって、北出もお財布から現金を取り出すことがほとんどなくなりました。
電車はPiTaPa、タクシーはGo、コンビニや飲食店ではQUICPayやauPayを使っていて、基本的にiPhoneがあればどの決済も完結できるので、もはやクレジットカードさえも出すのが億劫です。
更には、郵便局を始めとして、各金融機関が小銭の両替手数料を軒並み徴収するようになったことから、現金を管理するためのコストは嵩む一方です。
釣り銭用の小銭を用意するだけで両替手数料が当たり前にかかってしまいます。
このため、ここ最近、お客様の会社で現金商売の会社の試算表を見ていて気になるのが「支払手数料」の増加が顕著であることです。
両替を行う金融機関としては、現金を保有していること自体、収益を産まないお荷物となっているため、金融機関営業店では出納さんが現金保有高の圧縮に躍起です。
少しでも手数料収入による収益力強化を図る金融機関は、両替手数料はますます引き上げていくことが予想されます。
寺社仏閣のお賽銭でさえ、電子化が進んでいく予感です。
近い将来、クレジットや電子マネーの取扱手数料の率を、現金の両替手数料のそれを追い抜いてしまうことでしょう。
中国本土のように、"No cash"になっていきそうな気配です。

2 現ナマの管理はメンドクサイし、ミスってしまう

現金を管理するのは、何かとコストがかかります。
それ以上、現金の管理は、「メンドクサイ」のです。
特に、現金商売の場合、実務的に現金を管理する帳簿が「現金出納帳」です。
昔の八百屋さんや魚屋さんの店頭で天井から吊り下げられていたお金のカゴと同じです。
昨日からの繰越金額から今日の現金入金分を足して、現金出金分を引いて、残ったお金が今日営業終了後の現金在高、というのが現金出納帳の仕組みで、当たり前ですが、仕組みとしてはシンプルそのものです。
ところが、お客様と会話をしながらお金を受け取って、お釣りを渡して、次のお客様、また次のお客様と続いてくると、どうしてもお釣りをミスってしまいます。
ミスってはいけないのですが、どうしてもミスってしまうのは、現金商売の宿命です。
ほとんどのお客様は、お釣りが少なかったら「ちょっと、お釣り80円少ないで」と文句が来ますが、その逆なら文句もなく、そそくさとお店を立ち去ってしまうかもしれません。
なので、今日、お店の営業が終わって、現金出納帳の現金残高と実際のお金を数えた時に、実際のお金の方が少ないケースがどうしても出てきてしまいます。
会計の原則は、帳簿を現物に合わせることなので、実際のお金が現金出納帳の残高よりも少なかった分を「現金過不足」で費用計上するのが正しい仕訳です。
お客様からお預かりした現金を読み込ませてお釣りが自動で出金されるような最新のレジが導入されていない限り、「現金過不足」が発生しない方が不自然です。
現金商売なのに、「現金過不足」が計上されていない決算書や試算表を見ると、「こりゃ、ちゃんと現金管理やってないな!」、「現金出納帳つけとらへんやろ!」という具合にまともな銀行員ならピンときます。
現預金は金融機関の査定対象ではないため、あるはずの現金が実際はないという事態が起こってしまうと、「この決算書も試算表も全く信用ならん」ということになってしまって、金融機関としては取組スタンスをネガティブにならざるを得なくなります。
たかが現金、されど現金、です。
現金商売の中小企業経営者のみなさん、現金管理は厳格にお願いします。

【中小企業の銀行対策】PL上の「雑費」を減らすことの重要性とは?も併せてご一読下さい。

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