【中小企業の事業承継】複数資本ではなく、単一資本である強みとは?

1 資本の論理は生きている

今日は、複数資本ではなく、単一資本である強みについて考えてみます。
世の中の中小企業のほとんどは、「単一資本」です。
「単一資本」の現実としては、社長が筆頭株主で、精々その家族、親族が株主となっています。
「単一資本」の弱みとしては、大企業と比較すると、資本力が小さいことです。
経営者の立場とすると、「もっと大きな元手があれば、商売を大きくできるかもしれへんのになあ・・・」と欲が出てしまいがちです。
資本参加は、基本的に「返済不要」の資金なので、経営者にとってみると、一見、魅力的に見えてしまいます。
他方で、これまで「単一資本」を維持してきた中で、ファンドや業務提携先からの第三者からの資本が入るようになると、オーナー経営者の意思決定に大きな影響が出るようになります。
仮に第三者からの出資が少額資本提携(例えば、出資比率33.3%以下)で、株主総会で特別決議をできる出資比率を確保していたとしても、少数株主の意見を無碍に無視するわけにはいきません。
出資の目的が優先株のような投資的性格ではなくても、無配当では少数株主が納得しないことも想定されます。
ましては、IPOを実現して、不特定多数の株主が出現したら、オーナー社長はまずもって株主への配慮を優先せざるを得なくなります。
いうまでもなく、株主総会が株式会社における最高意思決定期間であるため、非上場、かつ、オーナー一族による単一資本であれば、オーナー経営者は全てを決することができます。
極論すると、M&Aで株式を全て買い手に譲渡することも、会社を畳んで清算してしまうことも決定できます。
このように、令和の世の中でも、厳然とした「資本の論理」はしっかりと生き続けているのです。

2 「単一資本」の下で、長期安定した経営を実現する

次にオーナー経営を維持することのメリットについて考えてみます。
複数資本が資本参加してくると、経営陣に対して、いつか、「もの言う株主」となり得ます。
資本参加する側は、いくら綺麗事を言ったところで、「投資の一環」であることには変わりはないので、短期的な配当を求めてきます。
短期的な配当を求めることは、収益をしっかりと上げることに他ならず、場合によってはリストラによる収益向上を要求しかねません。
世の中、ホワイトナイトなぞ、そうそうお目にかかることはできません。
一方で、「単一資本」を維持しながら短期的な利益を追求するのではなく、理念を実現し、会社を安定的に成長させていくことも経営戦略として真っ当です。
「単一資本」の維持に必須なのが、金融機関との良好な関係です。
会社を安定的に成長させていくためには、増加運転資金も設備資金も必要です。
「単一資本」で増加運転資金や設備資金を賄うには限界があるので、金融機関から資金調達する間接金融がマストです。
オーナー一族が会社を支配することは、決してネガティブではありません。
このように、中小企業経営者は、短期的な成長を目指す余り、複数資本を受け入れるのではなく、単一資本を維持し、経営者として、株主として君臨しながら、長期安定的な成長戦略を実現し、オーナー一族のDNA を継承、事業承継を実現していくことも排除してはならないのです。

【中小企業の銀行対策】万が一にも、アホな担当者に当たってしまった時の対処法とは?も併せてご一読下さい。

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