【中小企業の銀行対策】コロナ資金の「優先弁済」とは何なのか?

1 コロナで痛んだ中小企業の経営改善はこれからが本番だ

今日は、コロナ資金の「優先弁済」について、実務的なお話をします。
新型コロナウイルスの感染が概ね落ち着きをみせ、街には人と賑わいが戻ってきました。
コロナで痛んだ飲食業の売上も回復傾向で、一見すると、「コロナはもう過去のもの」に見えてしまいます。
他方で、コロナの影響を受けた飲食業や旅館業は、日々の売上が回復しても、大きく落ち込んだ売上を補填するためのコロナ資金は多額に上り、コロナ前の既往借入金よりもコロナ資金の残高の方が上回っているケースが散見されます。
言うまでもなく、借入金は、補助金や助成金ではないので、「借りたカネは返す」必要があります。
多くの飲食業や旅館業は、返済どころではなく、特例リスケや収益力改善計画の下、元本返済を据え置いたり、返済額を大幅に減額しています。
コロナで痛んだ中小企業の経営改善は今、ようやくスタートラインに立った状態で、これからが経営改善の本番を迎えます。
飲食業や旅館業の中小企業経営者のコロナとの本格的な闘いは、これからです。

2 優先弁済となるコロナ資金とそうではない資金との差とは?

例えば、コロナで大変だ、ということで既往の借入金に加えて、コロナ資金を調達し、追加のコロナ資金の調達が限界となり特例リスケで元本返済を止めたとします。
しかし、元本返済を止めてもキャッシュアウトが続いて資金ショートするとなって、更にコロナ資金を調達したとします。
このような場合で、収益改善が進み返済を再開するとなった時、特例リスケ前に調達したコロナ資金とコロナ前の既往借入金については、月次返済額を各行で残高按分にて返済します(これを「プロラタ返済」と言います)。
例えば、月額元本返済額200千円の場合、残高シェアがA行50%、B行30%、C行20%の場合、プロラタ返済額はA行100千円、B行60千円、C行40千円となります。
一方、特例リスケ後に調達したコロナ資金については、プロラタ返済とは別に約定通りに返済します(例えば、借入金20百万円、期間10年間、元本据置期間1年の場合、月次元本返済額は185千円))。
プロラタ返済とは別に約定通りに返済することを「優先弁済」と呼びます。
ただし、場合によっては特例リスケ後に調達したコロナ資金も優先弁済とせず、プロラタ返済に合算するケースもあります。
優先弁済の対象とするか否かについては、関与して頂く中小企業活性化協議会(旧中小企業再生支援協議会)に調整して頂くのが無難です。
正味の元本返済の金額も勘案しながら、債権者の理解を得ることが肝要です。
優先弁済の対象にするか、既往借入金とコロナ資金の返済をいくらにするかは、活性化協議会のご協力を仰ぐことに加えて、メインバンクを味方につけておくことが必須です。
中小企業経営者は、新型コロナウイルス感染拡大期のような非常事態に備えるためにも、常日頃から、メインバンクと良好な関係を築いておくことが重要なのです。

【中小企業の銀行対策】コロナ資金で潤沢となった現預金を放置するメリットとリスクとは?も併せてご一読下さい。

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