【中小企業の銀行対策】今話題の信用保証協会への「代位弁済」の実像とは?(その2)

今日は、昨日に引き続いて、中小企業の銀行対策として、今話題の信用保証協会への「代位弁済」の実像その2として、保証協会への代位弁済について考えてみます。

今日の論点は以下の2点。

1 代位弁済のメリット
2 代位弁済について回る小さくない代償

どうぞご一読下さい。

1 代位弁済のメリット

さて、中小企業経営者にとって、わかりにくい代位弁済のメリットについて掘り下げます。

通常、金融機関から信用保証協会に貸出債権が移る(代位弁済)ことによって、債務者中小企業は、信用保証協会に債務を弁済していくことになります。
間違っても、代位弁済によって、返済を勘弁してもらえるわけでは断じてありません。

実際の債権回収業務は、保証協会サービサーという法務大臣が認可したサービサー(債権回収会社)が信用保証協会から債権回収業務の委託を受けます。
本来であれば、債権回収業務は弁護士の専権業務でしたが、旧住専問題が大きな社会問題化したことを機に、法務大臣が許可した債権回収業者を「サービサー」と言います。

そもそも、信用保証協会自体が利益を追求する組織ではありません。
なので、代位弁済後の保証協会(実際の交渉は協会サービサーが相手となります)への弁済に際しては、従来、金融機関に支払っていた支払利息を元本返済に充当できます。
例えば、5,000万円の保証協会付きの債務があって、年率3.5%の支払利息は年間1,750千円ですが、単純にこの分が元本返済に回って、借入金を減らすことができます。
便宜上、遅延損害金がどんどん、積み上がっていきますが、とにかく、元本の返済に充当することで、借金を減らすスピードを上げることができます。
これこそが、代位弁済の最大のメリットです。

2 代位弁済について回る小さくない代償

「ほう、どうせ今の状態やったら、追加の融資も出えへんし、代位弁済してもらったら利息も元本に入れてもらえるんやったら、それは万々歳やないか!」
そういう経営者の声が聞こえてきそうです。

ところが、そう簡単にはいかないのが代位弁済です。
代位弁済に際して、資金繰り余力の乏しい中小企業経営者の大きなネックが2つ立ちはだかります。

1つ目のネックが、担保物件です。
例えば、メインバンクが本社の土地、建物に根抵当権を設定していたと仮定します。
根抵当権を設定している債権者は、「別除権」債権者と言います。

「別除権」とは一般には聞き慣れない言葉ですが、期限の利益喪失事項が認められた段階で、担保権を行使することができる権利のことを言います。
仮に、信用保証協会の保証付きの債務が信用保証協会に代位弁済されることになって、本社の土地・建物に設定されている根抵当権の一部が信用保証協会に流用(一部が信用保証協会に移転すること)された後であっても、プロパー資金に対するメインバンクの根抵当権は健在です。

プロパー資金の返済について、メインバンクと一定の合意に至らなければ、メインバンクは担保権を行使してきて、近い将来、競売にかけられて、第三者が落札してしまうと、債務者は、本社の土地・建物を速やかに明け渡さなければなりません。

これは法的措置の民事再生手続きでも同様で、別除権債権者とは一般債権者とは別に債務の弁済について合意しておくことが事業継続に必須となります。
結局のところ、担保物件を金融機関に預けてしまうと、保証協会保証付の債務が代位弁済されても、既往の金融機関との協調体制を維持することが事業継続の最低条件です。

2つ目のネックが、銀行預金です。
仮に、保証協会の保証付の債務が無担保であったとすると、代位弁済前に、金融機関は、融資と預金を相殺します。
当座預金は強制解約となる他、普通預金も残すことができません。
保証協会の保証付の債務が無担保であったなら、既往の金融機関は「これきっりやで」ということになってしまいます。

なので、金融機関と保証協会が最終的に代位弁済で合意し、手続きが完了するまで、2ヶ月から3ヶ月程度の期間を要するので、代位弁済が確定的となった中小企業は、お客様からの振込口座をメインバンクから、融資を受けていない金融機関の預金口座に変更して貰わなければなりません。
お客様から代位弁済となる金融機関に振込入金されてしまうと、借入金との相殺に充当されてしまいます。

特殊詐欺全盛期のこのご時世ですから、金融機関は行政庁から「マネーローンダリング」への対応を厳に求められています。
「では新規の口座を作らねば」と見ず知らずの金融機関店頭を訪れて、「普通預金の新規口座を作りたいんですが」と申し出たところで、窓口のテラーと後席に陣取る預金役席は「おい、この会社、大丈夫なんか?」と相談しきりとなって、預金役席が出張ってきて、「口座を作られる理由はなんですか? 何の目的で使われるおつもりですか」と質問責めにあうことは間違いありません。

運よく、お初の金融機関に普通預金口座を作ったところで、お客様に「お振込口座をA銀行からX銀行に変更をお願いします」とお願いするのがこれまた、骨が折れます。
お客様の会社も仕入先であれば安定供給を求めますし、外注先であればちゃんと仕事をこなしてくれることを大前提として仕事を出しているので、振込口座を変更するとなると、「お! 間違いなく銀行と揉めよったな。この会社、きな臭いで」ということになって、業界内で信用不安が発生する可能性が高まります。
下手をすると、お客様から取引の縮小や解消を求められる懸念も払拭できません。

更に見逃せないのが、代位弁済後の会社が破産等の法的措置に追い込まれるケースが散見されることです。
せっかく、代位弁済を受けて、協会サービサーと弁済方法を相談しながら会社を再建していくことになっても、経営者が事業継続を断念してしまいがちです。

協会サービサーも保証協会も、対応は「事務的」です。
代位弁済後の保証協会、協会サービサーの役割は、債権回収のただ一点だけです。
そこには、残念ながら「共感」は存在しません。
間違っても、メインバンクのようにビジネスマッチングでお客様を紹介してくれることはありません。
代位弁済後に経営破綻に至ってしまう一つ目の理由として、代位弁済を受けた会社を、経営者が子息や子女に継がせようとは到底考えなくなってしまうので、事業継続へのモチベーションが維持できなくなってしまうかもしれません。
代位弁済後に経営破綻に至ってしまう二つ目の理由として、ある種、代位弁済によって、今まで曲がりなりにも応援してくれてきた金融機関との繋がりが断ち切られて、経営者が経営再建へのマインドを失ってしまうからではないかと北出は考えています。

なんだかんだ言っても、リスケジュール中や経営改善局面の融資先に対して、融資係や融資課の金融機関役職員は「なんとか立ち直って欲しい」という強い気持ちを持っているからこそ、厳しいことも経営者に進言し、ビジネスマッチングにも取り組んでくれるのです。
北出も金融機関役職員同様、「なんとか立ち直って欲しい」と祈りながらの日々です。

代位弁済してもらったら楽になるかもしれないというのは、目の前の厳しい局面にだけフォーカスしてしまっている経営者の幻想なのかもしれません。

このように、中小企業経営者は、代位弁済のメリットを認識しつつも、代位弁済に際しては、大きな代償がついて回ることを認識する必要があるのです。

【中小企業の銀行対策】今話題の信用保証協会への「代位弁済」の実像とは?(その1)も併せてご一読下さい。

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