【中小企業経営者の心得】債権回収が会社経営の根幹だ
1 債権回収はわが国オリジナルの商慣習
わが国オリジナルの商慣習として、「掛売り」が存在します。
即金回収の小売業であっても、今時、クレジットや電子マネーの台頭によって現金取引は細る一方なので、売掛金が発生します。
ましてや、製造業や卸売、建設業といったB to Bの商売では、新規取引を除けば、前金、即金は例外的です。
モノを納品する時に納品書をつけて、締日に納品書の累積に基づいて請求書を発行、支払日に銀行振込であればヨシとすべきで、支払日に営業担当が顔を出して小切手を集金、ならばまだマシで、120日の手形を貰ってメインバンクに取立に出す、という昭和型の債権回収スタイルが生き続けています。
取立に出すのはまだマシで、集金もしくは書留で郵送されてきた手形をメインバンクにお願いして割引に出す、もアリアリです。
特に、関西では、まだまだ「集金文化」が根強く残っていて、25日から月末にかけていつも以上に渋滞するのは、関西で根強い「集金文化」の影響だと北出は感じています。
他の諸外国では取引の原則が、「キャッシュオン」なので、このような掛売り、集金、手形・小切手などは、わが国オリジナルの商慣習だということができます。
2 「掛売り」は性善説の賜物
このような「掛売り」が今の今までわが国で継続されている背景として、わが国での商取引が、性善説を基調にしているからだと北出は考えています。
業種、業態によっては、取引先に担保や保証金を供したりしますが、日々わが国で繰り返されるB to Bの商取引では担保、保証金などは例外的です。
「掛売り」は言葉を変えると「信用取引」です。
言葉の通り、相手を信用して、「お代は後で構いません」が特に中小企業の営業現場です。
「掛売り」=「信用取引」、即ち「性善説の賜物」なのです。
3 避けて通れない「貸倒」
性善説を基調とする賭売りですが、コロナ禍、燃料高、素材高の厳しい世の中、従来まで業界内で優良企業とされていたような会社が突然死してしまいます。
会社を精算してしまう破産法然り、事業継続を前提とした民事再生法然り、租税公課等の優先債権や金融機関等の別除権債権者に劣後する「掛売り」の一般債権者には配当はほとんど見込めません。
ある日突然、「貸倒損失」が会社を襲います。
大口の貸倒は営業利益を吹き飛ばしかねません。
「貸倒損失」は事業継続を危うくする会社の大きなリスクなのです。
4 債権回収は会社経営の根幹だ
この国で商いをする限り、貸倒損失を100%回避することは事実上不可能です。
しかしながら、そのリスクを会社の努力で少しずつでも軽減することはできます。
北出が関与させて頂く中でも、
北出:「あれ、売掛の残高がちょっと多いような。長期滞留債権とか、貸倒の未処理とか、社長、ありませんか?」
社長:「うちは、ばっちり管理してるからそんなん、ないで」
なのですが、経理から売掛台帳を見せてもらうと、「あれれ、このお客さん、ずっと未収になったままやないですか! 集金せなあきません」てなことがなきにしもあらず、です。
いくら一生懸命、売上を立てていても、債権回収が甘いままだと、穴の開いたバケツに水を注ぐようなものです。
中小企業経営者は、営業マンに対して、売ってから集金するまでをしっかり責任を持たせ、未収債権が発生する気配があれば、集金を徹底する必要があります。
中小企業経営者の皆さん、御社の債権回収に隙はありませんか?
早速、売掛台帳を点検して、長期滞留債権をいち早く発見し、速攻で集金しましょう。
折も折、年末を迎えているので、「年内に集金」を今月の営業方針としてしっかり打ち出して、会社全体に徹底しようではありませんか。