【中小企業の銀行対策】『売掛・在庫・設備を融資担保」について考える

1 大きく報道された「動産担保融資」とは何か?

法制審が、「企業などが融資を受ける際に設定する担保に関する中間試案」をまとめた、との報道がありました。
曰く、「不動産担保や個人保証に依存しない融資にシフトして、スタートアップや中小企業の成長機会を広げる」ということなので、中小企業にとっては、実に好ましい内容に感じられます。
確かに、特に地方銀行以下、下位の金融機関では保全重視の姿勢が強く、資産背景の乏しい中小企業にとっては、信用保証協会の保証、個人保証頼みであるのは間違いありません。
売掛金、在庫を担保にする融資は俗に「動産担保融資(ABL)」と呼ばれていて、このような融資商品を扱っている金融機関がないわけではありません。
ところが、少なくとも現在に至るまで、「動産担保融資」が中小企業融資のメインストリームになってはいません。
法制審が提言する「売掛金・在庫・設備を融資担保」にすることによって、本当に中小企業向け融資はドカドカ、ジャンジャン増えるのでしょうか?
「売掛金・在庫・設備を融資担保」は中小企業にとって、ホワイトナイトになるでしょうか?

2 北出の結論:「売掛金・在庫・設備を融資担保にする」は中小企業融資の救世主にはならない

報道ベースに冷水をかけるようなことはしたくはないし、法制審に物申すわけではありませんが、北出が考えるのに、「売掛金・在庫・設備を融資担保にする」は中小企業融資の救世主にはならないと考えています。
なぜならば、そもそも、金融機関が長期だろうが、短期だろうが「運転資金」の審査上、その会社のお金の流れが重要視されるからです。
具体的には「売掛金の平均回収サイトはどのくらいか?」、「受取手形サイトは何日間か?」、「前受金はもらえるのか?」、「在庫の保有高が何ヶ月分なのか」、「買掛金の支払サイトは?」、「支払手形はどのくらい切っているのか」などなどの判断材料を勘案して、「いくらの運転資金が必要なので、今回の運転資金実行額はこのくらいが妥当だ」という風に融資額が決まってきます。
設備資金ならば尚更で、「総額いくらの設備投資を行うことによって、投資効果がこの位出てきて、減価償却費が増加するので、返済原資が確保できる」ので、「今回の設備資金を取り組もう」という具合で融資額が決定されます。

つまり、売掛金も、在庫も、設備も、既往の運転資金借入金に既に盛り込まれているので、「これら動産を担保に入れるから追加融資をお願いします」と言われても、金融機関側としては、「うちは売掛も在庫もすでにみてますんで、追加の融資言われても難しい」という結論に至ってしまうことが予想されます。
逆に、格付や債務者区分が下がって追加の保全が必要だということになった時に、金融機関側から「動産について担保に入れてほしい」と言われかねません。

金融機関の審査の実務上、結論的に、「売掛金・在庫・設備を融資担保にする」は中小企業融資の救世主にはならない、と北出は考えています。
もちろん、経営者保証ガイドラインのこのご時世ですから、「金融機関融資の脱・担保主義は進められるべき」、には変わりはありません。
さらに、中小企業経営者にとって大切なことは、過度の保全(担保や保証)を金融機関側から求められることのないよう、筋肉質の収益体質と安定した財務内容を弛まぬ努力で追求していくことが必要なのです。

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