【中小建設業の銀行対策】建設業の粉飾はお決まりのパターンである理由とは?
1 公共工事絡みの中小建設業は、仕事が切れるタイミングを迎えた
今日は、中小建設業の銀行対策として、建設業の粉飾はお決まりのパターンである理由について考えてみます。
会計年度で令和4年度が終わったので、公共工事を受注、もしくは公共工事の元請から下請けで受注している中小建設業は、年度末までに完工、引き渡しを完了しているであろうことから、経営者も現場監督も気分的に一段落のタイミングです。
これから、役所からの工事代金が入金され、同時に金融機関から調達した引当(短期)の借入金を返済していく段取りです。
公共工事に絡んでいる中小建設業は、ほとんどのケースで、期をまたぐ工事が少なくなる決算期を6月とか8月とかにしていているため、これから決算を組んでいきます。
中小建設業経営者は、個々の工事の原価を精査して、「この工事は思いの他、儲かってよかったよかった」とか、「なんでこんなに原価が出てしもたんや!」と一喜一憂します。
公共工事は入札物件なので、公共工事元請業者からすると、経営審査によるランクが重要です。
「Aランクを死守するために、赤をは出す訳にはいかない」。
切実な事情を抱える中小建設業も少なくありません。
「赤字を出すわけにはいかない」となった時に、中小建設業経営者の頭によぎるのが、決算書を「ちょっとだけいじるか。次の期で取り戻せば何の問題もないやないか」。
悪魔の囁きです。
「Aランクを死守するために・・・」という切実な事情はとにかく、粉飾は絶対ダメです。
それでも、横行するのが粉飾決算です。
粉飾した決算書を審査する金融機関の目には、どのように映るのでしょうか?
2 建設業の会計は少し特殊であるが故に、粉飾はばれる
公共工事絡みの中小建設業は、材料費や外注費の支払が先行する一方で、完工後の工事代金回収が大きくなるため、どうしても、金融機関から引当(短期)の借入金(つなぎ資金)を調達する必要が出てきます。
短期のつなぎ資金の要請を受けた金融機関は、受注明細とそれを反映した資金繰り表を徴求します。
なので、期末までのどの物件が完工したのか、翌期に繰越した工事はどれなのかを把握します。
他方、中小建設業は決算を締めるのにあたって、翌期に繰り越した工事で受領した前受金は「未正工事受入金」として負債勘定に、先払した材料費、外注費、労務費及び現場経費相当額を「未成工事支出金」として資産勘定に計上します。
ここで赤字を回避して利益が出ているように「粉飾」しようとすると、未成工事支出金を増やして、未成工事受入金を減らします。
未成工事支出金を増やすと原価が下がる一方、未成工事受入金を減らすと売上高を増やすことができるので、帳簿上の利益を嵩上げすることができます。
金融機関はといえば、融資先から徴求した資金繰り表と受注明細に、決算書を照合すると、「あれれ、繰越工事が少ないのに、未成工事支出金が多過ぎる」、あるいは、「おいおい、もっと前受金もらってるはずなのに、未成工事受入金が少なすぎる」という具合に、中小建設業経営者が想像するよりも簡単に金融機関は「さては、いじったな」と見破ってしまいます。
最悪、金融機関側から総勘定元帳の提出を求められたら、一発で「いじったな」がバレてしまって、以降、短期のつなぎ資金の調達は難しくなります。
「Aランクを死守せねば・・・」という切実な事情はわからないではありませんが、粉飾をするくらいなら、堂々と赤字決算にして、現進行年度以降は原価管理を全社挙げて取り組んで、収益改善を進めるのが王道です。
粉飾決算は絶対にやってはいけないのです。