【中小企業の銀行対策】資金繰りが厳しくなった時に経営者がとるべき具体的な行動とは?

今日は、中小企業の銀行対策として、資金繰りが厳しくなった時に、経営者が取るべき具体的な行動について考えます。

今日の論点は、以下の2点です。

1 支払が滞ってはいけない債務
2 取引金融機関へのリスケジュール要請に際しての留意点

どうぞ、ご一読下さい。

1 支払が滞ってはいけない債務

新型コロナウイルス感染症の影響で、飲食業などのサービス業は甚大な影響を受けましたが、コロナ禍が明けて、世の中が全力で動き出してきた今でも、飲食業の業況は冴えません。
その原因として挙げられるのが、原材料高と人手不足に集約されます。

一時、落ち着きを取り戻したように見えていた外国為替市場でのドル高円安傾向ですが、ここへ来て、またしても円安が加速しています。
米国の利下げが想定よりも進んでいないことに加えて、日本銀行の金利の引き上げが停滞していることによって、日米の金利差が縮まらないことが、その理由のように思えます。

ドル円相場の動向は、3ヶ月程度先の原材料の価格にはねることから、年明けには更なる原材料単価の上昇が懸念されます。
飲食業の原価率は高止まり、資金繰りの圧迫要因となっています。

サービス業を巡る次の課題が人手不足です。
ファーストフードや低価格帯の飲食業ならタブレット等を活用して、ホールに立つ人員を削減することができますが、中価格帯から高価格帯の飲食業では、人が直接コミットするサービスがどうしても求められてしまうので、省力化が進みません。
人手不足によって、単価の高い人材派遣や短期バイトを活用せざるを得なくなり、平均的な人件費が上昇してしまいます。

このようなことから、飲食業等サービス業の収益性は落ちる傾向にあり、資金繰り余力が低下してしまいます。

資金繰り余力が低下してくると、「支払遅延」が発生してしまいます。
資金繰り余力が低下した時に、重要な「支払の優先順位」です。
支払を遅らせてはいけない債務として、租税公課、人件費、買掛債務が挙げられます。
税金、社会保険料はなんといっても優先債権ですし、国税徴収法もしくはそれに準ずる債務なので、溜めてしまうと銀行口座や売掛金が差押えられてしまう恐れが高まります。
銀行口座が差押えられてしまうと、金融機関に対して、融資先中小企業が有する期限の利益の喪失事項に思いっきり抵触してしまうので、即一括請求となってしまいます。
期限の利益を喪失してしまうと、従来から取り組んできた経営改善の努力が水泡に帰してしまうので、事業継続そのものが難しくなります。
人件費の支払遅延となると、従業員への歯止めが掛からなくなるため、現場は荒れ果て、お客様をお迎えするどころではなくなってしまいます。
買掛債務の支払遅延は、今後の納品への道が断たれてしまいかねないので、商いができなくなってしまいます。
これらの債務は支払遅延を起こすことなく、支払条件通りに支払うのが定石です。
万が一、支払遅延が発生する場合には、租税公課を含めて、支払遅延が発生する前に、先方に事前に連絡を入れ、支払いの遅延が発生することと、支払ができる日にちを明確に伝えることが必要です。
特に、買掛債務の支払遅延は、仕入先からの信頼を失ってしまい、必要な原材料等仕入れができなくなってしまいます。
このご時世ですから、問屋さんやメーカーも与信管理を徹底しているため、新規の取引先を探すのはそう簡単ではなく、新規取引はキャッシュオンでの支払を求められるのが通常です。

このように、支払遅延を無視したり、租税公課の督促状などを捨ててしまうようなことは断じてあってはならないのです。

【中小企業の銀行対策】資金繰りが厳しくなった時に経営者がとるべき具体的な行動とは?

2 取引金融機関へのリスケジュール要請に際しての留意点

弊所がお手伝いをさせて頂いたケースの中で散見されたのが、租税公課を滞納しているにも関わらず、銀行への返済が通常であるケースです。
これは、取るべき行動としては真逆です。

2009年12月に施行された中小企業金融円滑化法の流れによって、今でも、金融機関の所管官庁は、金融機関に対して、債務者からの返済条件の緩和要請には柔軟に対応するよう要請しています。
このため、ニューマネーの調達が難しい場合には、租税公課等に支払遅延が起きる前に、前もって、取引金融機関各行にリスケジュール(リスケ、返済条件の緩和)をお願いするべきです。

他方、一旦、リスケに踏み切ると原則としてニューマネーの調達ができなくなるので、たとえば、元請建設業のように、工事見合いの立替資金(引当融資、紐付ともいう)を調達する必要があれば、リスケジュールをしてしまうと、元請工事の受注ができなくなってしまうので、リスケジュールが妥当かどうかは、ケースバイケースです。

いざ、リスケジュールを金融機関に要請する場合には、丸腰で、金融機関担当者に「リスケを頼む」とお願いしても、金融機関担当者は困ってしまいます。
最低でも、向こう半年から1年間、リスケジュールをすれば、ニューマネーを調達することなく、支払遅延も発生することなく、資金が回ることを示す資金繰り表を作成する必要があります。
また、資金繰り表は、基本月次なので、月中に給与支払や買掛金や経費の支払日が到来する場合には、日繰り(日次)の資金繰り表を作成しておくと金融機関へのより強い説得力のある材料となります。

更に、留意すべきは、「債権者平等の原則」です。
「債権者平等の原則」とは、A銀行だけ返済を止めて、B銀行にはそのまま返済するというのがNGとなることです。
リスケジュールの場合、全ての取引金融機関で返済条件の緩和をすることが大原則です。

このように、リスケジュールは、通常の銀行取引とは違い、留意すべき点が多々あるので、弊所を始めとした専門家からアドバイスを求めることをお勧めします。

中小企業経営者は、支払の優先順位をしっかりと留意して、支払遅延による信用不安が起きないよう努力する必要があるのです。


資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へもご一読下さい。

資金繰りや銀行取引に不安を感じている経営者の皆様へ
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