【中小企業経営者の心得】経営悪化が始まると加速度的に経営危機が進んでしまう理由とは?
今日は、中小企業経営者の心得として、経営悪化が始まると、加速度的に経営危機が進んでしまう理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 負のスパイラルは加速をつけて進む
2 経営悪化はあっという間に会社全体に伝播する
どうぞ、ご一読下さい。
1 負のスパイラルは加速をつけて進む
弊所では、経営状況に問題がないもののさらに事業価値を高めているというお客様の中小企業に加えて、経営改善が必要な局面にあるお客様の中小企業のお手伝いをしています。
経営状況に問題がなく、取引金融機関の債務者区分は当然に「正常先」で、取引金融機関への返済原資もしっかりと確保できている会社は、いわば「勝ち癖」をつけていて、一時的に売上が減少したとしても、それをリカバリーできるような会社の仕組みができているケースが多く見受けられます。
一方、経営改善が必要な局面の会社は、内部要因か外部要因かにかかわらず、一時的に業況悪化を招いてしまっているため、いわば負の遺産を返すため、経営改善計画を策定したり、月次の損益計画を明示して、経営の立て直しを図ります。
弊所では、経営改善計画を策定した後、月次の損益計画に落とし込んで、月次で予実管理(予定に対して実績がどうなったかを検証すること)を行います。
予実管理の中で、月次の損益計画に対して、実績値が上回れば何はともなれ結果良しで、経営者自身も手応えを感じます。
これは経営改善局面に陥った負のスパイラルから脱するためにとても重要なことで、以降の予実管理の中で、実績値が計画値を上回り続ければ、「勝ち癖」をつけて、勝つことが当たり前になってきます。
一方、経営改善計画策定後、比較的早い段階で、実績値が計画値を下回るようになると、いわば「負け癖」が慢性化してしまいます。
いつしか、経営者自身が計画値よりも実績値が下回ることに危機感を感じにくくなり、負のスパイラルはますます加速度を増していくことになりかねません。
こうなってくると、経営改善は全く進まず、症状は悪化の一途を辿ることになります。
経営改善の道は遠のいてしまい、取引金融機関の支援継続も覚束なくなってしまいます。
このように、勝ち癖をつけることが極めて重要である一方、負のスパイラルから一刻も早く脱却し、負け癖から脱することが喫緊の経営課題となるのです。

2 経営悪化はあっという間に会社全体に伝播する
会社の経営状況に支障がない時には、会社全体の規律が守られ、従業員の雰囲気も仕事という緊張がある中にも悪くはない状況を維持することができます。
ところが、収益が悪化して試算表の数字が悪くなってくると、取引金融機関も黙っているわけにはいかなくなります。
社長の携帯にかかってくる取引金融機関の担当者の着信を無視していると、朝イチで、取引金融機関の担当者だけではなく、役席や場合によって支店長も帯同して、ノーアポでやってくることになります。
取引金融機関の銀行員等と社長が応接室にこもって、1時間近く打ち合わせをして、打ち合わせが終わって銀行員が帰って行った途端、社長の機嫌が悪くなって、あちこち電話をかけまくって、ため息の一つや二つついているのを従業員が目にします。
そのようなシーンを見せつけられた従業員は皆、「うちの会社、ホンマに大丈夫なんやろか?」と心配になるのは当然のことです。
このご時世ですから、働いている従業員からすれば、「賃上げはしてくれるのか」というふわっとした不安に加えて、「安心して働きたい」という率直な願望を持っています。
機嫌の悪い支店長と社長の姿を見て不安に感じた従業員は、コンビニに走って転職雑誌を購入して、昼休みの休憩室では転職雑誌が回し読みされるようなことになりかねません。
このように、試算表や決算書を目にしない従業員であっても、自らが勤務する会社の経営状況が悪化していることは肌身で実感することになるのです。
中小企業経営者は、特に、経営改善局面にある会社であればあるほど、ちょっとした社内の綻びを見逃すことなく、経営の立て直しに邁進する必要があるのです。