【中小企業の銀行対策】良い借入金と悪い借入金の違いとは?

今日は、中小企業の銀行対策として、良い借入金と悪い借入金との違いについて考えてみます。

今日の論点は以下の2点。

1 悪い借入金とは「後ろ向き資金」である
2 BSの資産を増加させる借入金が会社を成長させる

どうぞ、ご一読下さい。

1 悪い借入金とは「後ろ向き資金」である

中小企業経営者にとっては借入金は身近なものですが、世間一般では、借入金について、「過払金」や「自己破産」といったネガティブなイメージがついて回ります。
とはいえ、非上場の中小企業にとっては、株式を上場したり、社債を広く投資家に販売するなどの直接金融による資金調達が困難なため、メインバンク、サブバンク、政府系金融機関といった金融機関から資金調達をするのが一般的です。

他方、北出は、一口に借入金と言っても、「良い借入金」と「悪い借入金」があると考えています。
「悪い借入金」の典型的な例が「後ろ向き資金」です。
業況が悪化して、流動性預金がみるみる減少していて、資金ショートしそうなので、事業継続を最優先するため、金融機関から融資を受けることも起こり得ます。
「後ろ向き資金」の典型例が、中小サービス業にとってのコロナ禍でコロナ資金です。

「後ろ向き資金」が苦しいところなのが、せっかく資金調達してもBS(貸借対照表)上の資産が増えないことです。
簿記の仕訳で言えば、
30百万円借入実行時  預金  30,000千円/借入金  30,000千円
直後の支払日     買掛金 15,000千円/預金   15,000千円
           未払金  10,000千円/預金   10,000千円
となってしまって、せっかく借入れた虎の子の30,000千円の内、直後の支払日に残る預金はたったの5,000千円ポッキリです。

中小サービス業がコロナ禍でコロナ資金の借入金が膨張してしまったのは、複数回に渡って、メインバンクと政府系金融機関からコロナ資金を調達しても、虎の子のおカネが後ろ向きの資金の影響をモロに受けたからに他なりません。
コロナ資金で調達した資金はあっという間に干上がってしまったのです。

念のため申し上げますが、コロナ資金は確かに、「後ろ向き資金」で、良いか悪いかと言えば、「悪い借入金」と言えますが、事業継続と雇用確保のため、中小サービス業が調達したコロナ資金は止むを得ず調達した資金で、コロナ資金があったからこそ、会社を存続することが出来たのです。

2 BSの資産を増加させる借入金が会社を成長させる

悪い借入金について、1でお話ししました。

では、良い借入金とはどのようなものでしょうか?
一言で言えば、BS上の資産が増えることです。

例えば、製造業で新しい受注に対応するため50百万円の工作機械を設備資金をメインバンクから調達して導入する場合、簿記の仕訳としては、
機械設備 30,000千円/借入金 30,000千円
となります。
工作機械は、毎年減価償却していきますが、減価償却費はキャッシュアウトしない費用なので、借入金の返済原資となります。
50百万円の工作機械は、新たな受注に対応して売上増を実現するだけではなく、生産効率を向上させ、省人化を実現できます。
また、売上が増えて、受取手形や売掛金が増加することによる「増加運転資金」の場合、調達した資金で増加する受取手形や売掛金を吸収でき、資金ショートを起こすことなく、売上増加を実現することが出来ます。
増加した受取手形や売掛金は順次現預金に振り替わって、キャッシュの増加が期待できます。

大切なことは、貸方の借入金に対して、借入金に対応する借方の資産が増加することです。

資産を増加させる借入金が会社を成長させます。
中小企業経営者は、設備資金と増加運転資金こそが「良い借入金」で、会社の成長エンジンになることを念頭に置いて、メインバンクから必要な資金をタイムリーに調達することに腐心する必要があるのです。

【中小企業の銀行対策】メインバンクにしてはいけない金融機関の特徴とは?も併せてご一読下さい。

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