【中小企業経営者の心得】八方美人の商いがもう限界に来ている理由とは?
今日は、中小企業経営者の心得として、八方美人の商いがもう限界に来ている理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点です。
1 価格転嫁を躊躇している場合ではない
2 価格転嫁をしなければ資金繰りが立ち行かなくなる
どうぞ、ご一読下さい。
1 価格転嫁を躊躇している場合ではない
企業間物価の上昇圧力が弱まりません。
業種、業態を問わず、原材料価格の引き上げが続いています。
中小製造業で、大手の下請、協力工場の場合、価格転嫁はなかなか難しいものですが、品質を担保してくれるために、親会社(町工場の場合のお客様、資本関係はない)の方から、「単価の見直しをしましょうか」とお声がけいただけるケースも見受けられます。
親会社の方も、下請を叩いてコストを下げることよりも、品質、納期をしっかり担保してくれることに重きを置くようになっています。
そんな仏様のような親会社だけではありませんが、下請にコストカットを強いることで、下請業者の人材が流出して、不適合品が山のように出てしまうようでは、余計なコストがかかってしまうばかりか、信用問題にも発展しかねません。
また、サービス業についても同様の傾向が見受けられます。
信用調査会社の調べでは、ラーメン店の運営主体の倒産が増加しているとされていて、価格転嫁に躊躇してしまうと、原価の上昇や水道光熱費の増加分を吸収できず、倒産に至ってしまいます。
倒産の場合、法的措置となる場合がカウントされているようですが、廃業、休業は、倒産件数よりももっと多いはずです。
千円の壁に負けることなく、しっかりと美味しい料理をサーブして、値上げ分を上回る満足度をお客様に感じていただけることが重要です。
確かに、大手企業はとにかく、中小企業で働く多くの就業者の賃上げは物価上昇分を下回っていることから、外食自体を減らしている家計は少なくありません。
一方で、昨年の年末から今年の年始にかけてのホノルル便の搭乗者数は、過去最高に達しました。
物価が高く、かつ円安の中であっても、ハワイに行く人は間違いなくいるわけですから、サービス業も富裕層向けに対象をシフトさせていくことは明らかです。
業種、業態を問わず、八方美人の商いがもう限界が来てしまっているのです。

2 価格転嫁をしなければ資金繰りが立ち行かなくなる
確かに、価格転嫁には勇気が入ります。
「お客様から値上げするんなら、他社にお願いするしかない」と言われるかもしれない。
値上げをしたら、常連さんが来なくなってしまうのでは・・・。
価格転嫁をするのは簡単なことではありません。
しかしながら、原材料が上がり、水道光熱費も上昇する中で、販売単価を上げることができなければ、売上総利益率が低下します。
水道光熱費の上昇は販管費を押し上げます。
これでは、営業損益で減益は必至で、赤字に転落してしまいかねません。
原価の上昇と販管費の増加は、資金繰りの圧迫に直結します。
取引金融機関としても、営業損益で利益が出なくなってしまった後で、後ろ向き資金の要請には応えることが難しくなります。
売上原価の上昇と販管費の増加によって、返済原資が失われてしまえば、リスケジュールに追い込まれかねないばかりか、事業継続さえ困難になってしまいます。
デフレからインフレに局面が急転換しています。
中小企業経営者は、長らく続いたデフレマインドを払拭して、インフレ局面なのだから、値上げはマストであることを再認識する必要があります。
会社を安定的に運営するためにも、営業担当者任せではなく、経営者自身が価格転嫁交渉に当たることも念頭に置いて、価格転嫁に全力を傾注する必要があるのです。