【中小企業の銀行対策】プロラタと優先弁済がリスケジュールのキーワードである理由とは?
今日は、中小企業の銀行対策として、「プロラタ」と「優先弁済」が条件変更のキーワードである理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点。
1 中小企業経営者にとってリスケジュールは対岸の火事ではない
2 プロラタは債権者平等の原則で、優先弁済はその例外である
どうぞ、ご一読下さい。
1 中小企業経営者にとってリスケジュールは対岸の火事ではない
「コロナ特例リスケジュール」が世間である程度認知されるようになったのが、コロナ禍の初期段階である2020年の夏前以降です。
「コロナでいよいよ大変だ」と世界中で危機が爆発してから、日本の中小サービス業の中小企業・小規模事業者が、コロナ資金を調達しても資金が足りず、返済を止めたのが「コロナ特例リスケジュール」でした。
それから、やがて4年が経過しようという今、大阪を始めとして、街にはインバウンドが戻り、さながらコロナ前を彷彿されるような日常が戻ってきました。
リスケジュール(条件変更)自体は、旧民主党政権が発足した間もなく施行された「中小企業金融円滑化法」以来、珍しいものではなくなりましたが、少なからぬ中小企業経営者、小規模事業者事業主は、「リスケジュールなんて、うちには関係ないわ」と考えがちです。
しかしながら、新型コロナウイルス感染拡大然り、能登半島地震然り、アフターコロナでの円安による原材料高に、人手不足を反映した人件費高によって、中小企業・小規模事業者にとっては、想定外のリスクがあちらこちらに転がっていることは言うまでもありません。
2024年は、世界中で選挙イヤーでもあり、想定外の紛争の発生や経済環境の激減がないとは誰も言い切れるものではありません。
国内では盤石であるはずのトヨタグループでさえ、日野自動車、ダイハツ工業に豊田自動織機といったそうそうたる企業で、重大なコンプライアンス違反も顕在化しています。
想定外のリスクが降りかかってきて、目に見えない地雷源を踏んでしまった結果、会社の存続が危ぶまれるような事態に陥ることは十二分に考えられます。
それ故、中小企業経営者、小規模事業者事業主は、皆、収益の急激な悪化、資金繰り余力の低下によって、取引金融機関各行にリスケジュール(条件変更)を要請することも想定しておく必要があります。
政界ではありませんが、中小企業の経営は、「一寸先は闇」なのです。
2 プロラタは債権者平等の原則で、優先弁済はその例外である
「中小企業金融円滑化法は期限切れになったけれど、所管官庁は金融機関に対して、行政指導をしているから、資金繰りが厳しくなったら返済をリスケジュールしてもらえばいいんでしょ」。
そのような声が一部の中小企業経営者から聞こえてきそうです。
確かに、想定外の外部要因の脅威によって資金繰りが厳しくなって、事業継続を最優先するため借入金の返済を条件変更すると言うのは、一定の合理性があります。
外部要因の脅威の度合いにもよりますが、新型コロナウイルスの感染拡大や天災のような自社や経営者の努力ではどうしようもない脅威にさらされたことで、一定の雇用を守り、事業継続させるために、金融機関に支援を仰ぐのは、よくよく理解できます。
追加のニューマネーも重要ですが、過剰債務気味の企業であれば、更に借入金を増やすよりは、将来的な返済負担を考えると、リスケジュールが合理的なケースが多く見受けられます。
しかしながら、あくまでも、リスケジュール、条件変更というには緊急避難的な取扱いであることを忘れてはなりません。
借金は、補助金や助成金ではありません。
借りたカネは返さなければなりません。
これが世の中の商道徳の基本であり、これが崩れてしまっては、我が国の資本主義経済は立ち行かなくなります。
なので、一定期間、元本返済をリスケジュールして、収益が改善しFCF(フリーキャッシュフロー)が創出できるようになったところで、月額もしくは年間でいくら返済するかという目線で、経営改善を進めていくのが望ましいと北出は考えています。
そこで、月額各金融機関にいくら返済するかということで登場するのが「プロラタ」という考え方です。
プロラタの具体的な例として、借入残高がA銀行200百万円、B銀行100百万円、C銀行80百万円、D庫20百万円の場合、各行の借入残高シェアは、A銀行50.0%、B銀行25.0%、C銀行20%、D庫5%となります。
月額返済可能額が500千円の場合、各行別の返済額は、借入残高シェアに按分することで、A銀行250千円、B銀行125千円、C銀行100%、D庫25千円と求めることができます。
これがプロラタの簡単な例です。
これに対して、優先弁済とは、プロラタの対象にならない返済のことを言います。
具体的には、リスケジュール後に実行されたニューマネーの返済はプロラタの対象外となって、プロラタ分の返済とは別途、返済を進めていくことです。
優先弁済は、いわば、プロラタの例外です。
リスケジュールについては、経営改善局面の会社の状況が画一的ではないことに加えて、個々の取引金融機関で保全の度合いが一律ではないなど、ケースバイケースとなります。
リスケジュール実行後の収益改善の進め方と、返済の再開、返済額の増額などについては、ぜひ弊所までお気軽にご相談下さい。