【中小企業の銀行対策】今年の春闘を踏まえた中小企業にとっての賃上げの理想像とは?

今日は、中小企業の銀行対策として、今年の春闘を踏まえた中小企業にとっての賃上げの理想像について考えます。

今日の論点は、以下の2点。
1 賃上げの実態は大手企業と中小企業とでは大きな隔たりがある
2 銀行対策上の中小企業にとっての理想的な賃上げについて

どうぞ、ご一読下さい。

 

1 賃上げの実態は大手企業と中小企業とでは大きな隔たりがある

今年の春闘は、大手企業を中心に、近年にない大幅な賃上げとなったと報道されています。

わたくし北出は、サラリーマン生活から足を洗ってから(?)今年の3月末でちょうど15年になりますが、曲がりなりに組合員でもありましたから15年以上前のデフレ真っ只中の春闘の記憶からすると、報道ベースでは隔世の感は否めません。

しかし、どうも、政労使一体の賃上げ騒動には、わたくし北出は違和感を禁じることができません。
なんか、おかしい。
どうも納得がいかない。

わたくし北出は、労務の専門家ではありませんが、北出のサラリーマン時代の春闘像と、最近のお客様の中小企業の賃上げの実態に加えて、中小企業の銀行対策を踏まえて、今年の春闘、賃上げについて掘り下げてみることにします。

おそらく、15年前も今も同様だと思われますが、既にほとんどの大手企業の賃金体系は、年功序列型から、業績評価ベース型に移行しています。
年功序列型の賃金体系であれば、基本給の多くの部分を「年齢給」が占めていました。
ところが、今や、非管理職でさえ、賃金テーブル上の「年齢給」のウェイトは大きく引き下げられ、少なくとも管理職以上は年齢給が廃止されている会社の方が大勢のはずです。
今や、「業績評価給」が賃金テーブルの大半を占めるようになっているのであれば、少なくとも、働いている個人のベースで見れば、ベースアップで賃金テーブルが書き換えられることよりも、自分自身の業績評価を上げることに大きな関心が向いているはずなのです。

仮に、業績評価がSABCの4段階評価でなされている会社の場合、少なくとも、よく仕事ができる人で、コンスタントにSもしくはA評価を叩き出している人であれば、ベースアップに大きな関心を払うことはないのです(但し、賞与が何ヶ月分かということには強い興味がある)。

しかし、世間では、政労使が寄ってたかって、ベースアップいくらで、定期昇給がいくらなんて報道されていますが、昭和の年功序列型の賃金体系じゃあるまいし、いくらベースアップによって賃金テーブルを書き換えても、業績評価で高い評価を得られない従業員には賃上げ効果が及びません。
北出個人的には、白けた感じしかありません。

ところが、中小企業の場合、少し状況が異なります。
中小企業と言っても、資本金9,900万円の大企業スレスレの中堅会社もあれば、資本金100万円の小規模事業者も報道ベースの「中小企業」には含まれます。
中堅企業であればさることながら、中小企業、小規模事業者の場合、ほとんどの会社では賃金テーブルも存在しませんし、半期に一度の評価制度も回っていません。
賃金テーブルがなく、評価制度も回されていない中小企業、小規模事業者が賃上げをしようとすると、現実的には、正社員に一律に何%アップという風に賃上げせざるを得ません。
また、最低賃金の引き上げピッチが上がっていることも中小企業、小規模事業者には弊害が及んでいます。
新しく採用した人に高い賃金を設定すると、従来から働いている従業員から不満が出ます。
新しく採用した人に高い賃金を設定すると、若手、社歴の浅い従業員の賃金を上げざるを得ない状況が発生しています。

こういう状況が中小企業、小規模事業者の実態なのです。

2 銀行対策上の中小企業にとっての理想的な賃上げについて

中小企業経営者からすれば、「賃上げ? うちは関係あらへん」というところが本音かもしれませんが、政労使を挙げた賃上げキャンペーンが大々的に展開されていることを踏まえて、人材確保のため、賃上げに後向きというわけにはいかないのが現実です。

中小企業で、経営改善局面にある場合、従来は、取引金融機関のスタンスとしては、「賃上げ?? いや、とんでもないんじゃありませんか」という声が担当者から聞かれたこともありましたが、このご世辞、取引金融機関としても、「人件費をもっと下げて、収益改善して下さい」と真正面から口にすることは憚られるというのが現実です。

実際、中小製造業や建設業の場合、新規求人をかけても、一本も電話が鳴らないというのがザラです。
なので、消極的ではあるのですが、中小製造業や建設業の手っ取り早い人材確保策としては、「今働いてくれてる人を辞めさせない」というのが絶対です。

このため、取引金融機関、中でもメインバンクとしては、元本返済ストップ、利払いのみ(全止)という場合ではない限り、条件変更中であっても、「人材確保のため一律3%賃上げに踏み切りました」という経営方針に異を唱えることは基本的にありません。
とはいえ、経営改善局面である限りには、定期的なモニタリング(業況報告、弊所では、月次モニタリングを原則としています)時に賃上げや少額設備投資を行うことを事前に取引金融機関に周知しておくことが肝要です。
後々、試算表上で、「あれれ、福利厚生費がなんでこんなに増えてるんですか」とか「固定資産が増えてますがこれはなんですか」という質問を取引金融機関から受けることがあってはなりません。

対従業員に対しては、直接の賃上げではないにせよ、休憩時間帯に、会社が福利厚生費でお菓子を出したり、トイレを様式に改修したりして、従業員満足度を上げることも人材確保に意外と効果的です。
賞与ではないにせよ、盆と正月前に「寸志」を従業員に支給することも検討すべきです。

とはいえ、福利厚生費を増額したり、若干の設備投資や寸志の原資を確保するためには、本業でしっかりと利益を出すことが大大前提です。

中小企業経営者は、賃上げを断行して、従業員が安心して働き続けられるよう、本業でより一層儲けるための普段の経営努力を惜しんではならないのです。

 

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