【中小企業の事業承継】オーナー企業における親子間事業承継がなかなか進まない正味の理由とは?

今日は、中小企業の事業承継に関して、オーナー企業における親子間事業承継がなかなか進まない正味の理由について考えます。

今日の論点は、以下の2点。

1 親子間だからこそ感情が混じりややこしい
2 親子間事業承継に立ちはだかる障害

どうぞ、ご一読下さい。


1 親子間だからこそ感情が混じりややこしい

我が国全体の高齢化が著しいことは日々報道されていますが、オーナー企業におけるオーナー社長の高齢化は実はもっと深刻です。

帝国データバンクのcosmos2(企業概要ファイル)を再編加工したデータによると、少し古いデータですが、1995年当時の経営者年齢の山は47歳でしたが、2018年には69歳に移動しています。
その後、M&Aによる株式譲渡がかなり行き渡ったとしても、2018年の経営者年齢の山が69歳ということは、現在のそれは、もっと高い年齢になっていることが想像されます。

北出は常々、オーナー社長に直系の息子がいて、事業承継に否定的でない限り、極力直系の息子に事業承継させるのが望ましい考えています。
直系の息子が例えば、大企業に就職していて家業を継ぐつもりが全くない場合や、そもそも直系の親族に事業承継できる候補がいない場合には、M&Aによる株式譲渡はやむなしですが、オーナーチェンジが起きると、元々のオーナーの顔でつながっていた取引先との取引が解消されてしまったり、キーマンとなる従業員が離反してしまうこともよくありがちです。

他方、親子間だからこそ、本音がなかなか伝わらなかったり、逆に諍いが起きたりすることも往々にしてあり得ます。

北出が知る限りでも、事業承継後でも、創業者で父である取締役会長と、事業承継を受けた2代目社長との間で、業務指示の内容が真逆となってしまって、従業員がどちらの指示に従うべきか、悩んでしまうケースもなきにしもあらずです。

事業承継を受けた2代目社長が、自らのカラーを出そうとして、前社長時代の経営方針を大きく変えてしまうことも起こり得ます。

確かに、どちらにも分があって、一方を否定するわけにはいかないところが難しいところです。
仮に、親子で会社経営の方針に齟齬が生じた場合でも、会社が社会の公器であることを双方が改めて認識、協力して、会社をより良き方向に舵取りしていくことが肝要です。

2 親子間事業承継に立ちはだかる障害

先ほど、お話ししたのは、謂わば親子間の「プライド合戦」です。
これはある意味、感情的なものなので、親子であれば、双方が誠実に向かい合い、議論を尽くせば乗り越えられるものと信じています。

他方、さらに、親子間事業承継に立ちはだかる障害が、「銀行取引」です。
言うまでもなく、非上場中小企業にとって、金融機関は最大の資金調達源です。
無借金経営ならいざ知らず、余程のスモールビジネスでない限り、運転資金も設備資金も借入金があるのが自然です。

他方、創業者で父親の心情からすれば、「息子にはカネの苦労をさせたくない」という親心があります。
息子からすれば、本音からすると、「なんで親父の代の借金を背負わならあかんのや」という感情が先行するのが自然です。
ましてや、社長に就任したら即、会社の借入金の連帯保証債務を負わなければならなくなるとなれば、新社長の心中は穏やかではありません。

親子間事業承継が完了しても、父親が最後まで握ってしまいがちなのが銀行取引でもあります。

このような事態を回避するため、経営者保証ガイドラインが運用されていて、会社とオーナー一族がしっかりと分別できていること、モニタリング(業況報告)を定期的に行うことを条件として、連帯保証債務の解除が行政庁から金融機関に要請されています。
もちろん、毎期しっかりと利益が出せていることと、財務体質(貸借対照表)が健全であることは、経営者保証ガイドラインの当然の前提です。

ところが、金融機関とすれば、既に徴求している連帯保証人は既得権益なので、金融機関側から「当行は連帯保証を外させてもらいます」と積極的に働きかけてくれることはほとんど期待できません。

このため、親子間事業承継をスムースに進めるためにも、連帯保証債務を外すことを含めて、安定した銀行取引の実現が必要不可欠です。

中小企業オーナー経営者は、親子間事業承継を早期に実現するために、問題を先送りすることなく、連帯保証人の解除を含めた銀行取引の円滑化を実現する必要があるのです。


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