【中小企業の事業承継】廃業必至の同業他社の受け皿として存在感を高めるべき理由とは?
今日は、中小企業のあるべき事業承継として、後継者を確立して、廃業必至の同業他社の受け皿として存在感を高めるべき理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点。
1 自主廃業は確実に増える
2 自主廃業やむなしの同業他社の受け皿となる
どうぞ、ご一読下さい。
1 自主廃業は確実に増える
中小企業の自主廃業の増加が止まりません。
2023年度(2023年4月〜2024年3月)の休廃業企業数は、前年度比0.3%増となる4万9,788件なのだそうで(東京商工リサーチ資料による)、中小企業庁によれば我が国の企業数が360万社とされることを勘案すると、相当数の企業が世の中からなくなっていることがわかります。
他方、2023年度の倒産件数が9,053件(東京商工リサーチ公表による)に過ぎません。
外圧で倒産に追い込まれた会社よりも、圧倒的に「自主的に」会社をたたむ休廃業の方が多数を占めていることが明らかです。
中小企業・小規模事業者の経営者・事業主の高齢化がますます進行しているため、休廃業の件数はこの先、ますます増加していくことは避けられそうにありません。
これでは、特に、ニッポンのモノづくりが立ち行かなくなってしまいかねません。
たとえ、赤字で債務超過の会社であっても、実際に取引先があり、従業員もいるわけですから、M&Aで、借金付き1円譲渡でも構わないので、どんどん株式譲渡で会社を譲っていくべきだと北出個人的には思いますが、実際問題、トップ面談から基本合意、DD(デューデリジェンス)で大変な思いをして、売り手買い手双方で譲渡価格が折り合い、最終合意に至り、資金決済まで至るまでには、売り手側の経営者の気力、体力共に相当なものになってしまいます。
「もう、そんなん、面倒臭い。わしの代で綺麗さっぱりおしまい」と自主廃業でフェイドアウトしてしまうというのが世の中の多数を占めるのかもしれません。
どの業種、業態を問わず、この先、自主廃業はますます増えていくことは間違いなさそうです。
2 自主廃業やむなしの同業他社の受け皿となる
自主廃業必至の中小企業・小規模事業者の中にあっても、創業者が子息にしっかりと帝王学を学ばせて、事業承継に向けて着々と準備を進めている中小企業・小規模事業者もちゃんと存在します。
親会社(製造業でいう「親会社」とは仕事を出してくれる会社のこと、資本関係はないケースがほとんどです)にしてみても、いくつかの外注業者の中でも、後継者がしっかり育成されている外注先に優先的に仕事を出すようになるのは至極当然のことです。
外注先の中から「自主廃業を考えています」という申し出が親会社にあれば、親会社とすれば、後継者がしっかりとしている別の外注業者に「仕事を別の外注業者に移行できるように協力して下さい」ということになります。
後継者がしっかりと育成できていて、次世代まで盤石ということになれば、失われた30年間で薄い利幅の中で競合してきた同業他社の受け皿に十分なり得るのです。
これは、製造業だけではなく、建設業でも、他の業界でも同じことが共通しています。
「うちの会社は息子が後を継いでいく方向ですので、どうぞ、ご安心下さい」
親会社だけではなく、メインバンクも後継者がいてくれるというだけで、万々歳です。
メインバンクとしても、「しっかりと支援させていただきますので、引き続きよろしくお願いしますよ」と支店長が高笑いしてくれるはずです。
このように、失われた30年を経て、インフレ(スタグフレーション?)局面に入ってからは、同業他社との競争関係に変化が起きつつあります。
「安ければ良い」というデフレマインドから、「しっかりと安心して任せられる」という安心感が新たな価値観として台頭してくる予感です。
中小企業経営者は、長らく直面してこなかった原材料高、人手不足の最中ではありますが、世の中は、「安ければ良い」というデフレ型思考は終わりを告げつつあることを認識して、次世代に残せる会社を創造していく必要があるのです。