【中小企業の事業承継策】会社を常に身綺麗にしておかなければならない理由とは?

今日は、中小企業の事業承継策として、会社を常に身綺麗にしておかなければならない理由について考えます。

今日の論点は下記の2点。

1 親族間承継も第三者株式譲渡も会社の潜在的リスクを極小化する
2 譲る側は表面保証からは逃げられない

どうぞご一読下さい。

 

1 親族間承継も第三者株式譲渡も会社の潜在的リスクを極小化する

今年のお盆休みはどこまでいっても台風に振り回されましたが、早ければ今日から、関西でも遅くとも明日から仕事再開です。
お盆の夏季休業中、55歳以上の中小企業経営者は少しでも会社の未来、事業承継に向き合うことはできたでしょうか。
中には、「よし、息子に譲る。そのためにも会社を継がせられるような形にしていきたい」であったり、「親族にも、番頭にも会社は任せられない。本格的にM&Aによる第三者への株式譲渡を考えていきたい」と一定の結論を出した経営者がいるかもしれません。

創業者が会社を興して25年、30年も経ってくると、経営者が知らないうちに、会社の中に垢がたまってしまっているかもしれません。
会社の中ではそれが常識になっていても、世間から見れば非常識、ということも珍しくありません。
世間から見れば非常識であることが、会社の中での潜在的なリスクです。
いざ、第三者への株式譲渡となると、買う側は、通常デューデリジェンス(DD)を実施します。
財務DDではBSの健全性は担保されているか、粉飾はされていないか、売上や仕入は適切に計上されているかを見極めます。
法務DDでは、残業代の不払いや労働安全義務違反はないかなどの労務リスクを点検します。
もちろん、どれだけ会社が日々コンプライアンスを重視していても、100点満点とはなりませんが、潜在的リスクは極力排除しなければなりません。

第三者への株式譲渡ではDDが実施されるため潜在的リスクが顕在化しますが、潜在的リスクを放置したままで親族間へ事業承継してしまうと、譲り受けた子息なりは後々大変な苦労を強いられかねません。
潜在的リスクを放置したままで親族間事業承継をしてしまうと、譲り受けた子息は事業承継の最初の段階からいつ爆発するかもしれない爆弾を抱えた状況で会社の舵取りを行わなければならなくなります。

このように、特に、事業承継が近い将来見えている中小企業は、譲る側が社長在任中に、主体的に潜在的リスクを潰しておかなければなりません。

2 譲る側は表面保証からは逃げられない

では、潜在的リスクを隠して、DDでも運よく潜在的リスクがバレることなく、株式譲渡がディールダンし、資金の決済も済んだとしましょう。
売る側とすれば、「しめしめ、あのヤバそうなこともバレずに済んだから、ラッキーラッキー。これで俺は逃げ切れたワイ」とタカを括っていたとします。

しかしながら、買う側は、売る側に対して、ディールダン以前の損害賠償等の瑕疵が露見した場合は、旧株主が損害を負うという「表面保証」という特約を付すのが通常です。

一般的に損害賠償のような請求は、日が経つにつれて多額になってしまう傾向があるので、「逃げ切れたワイ」とタカを括っていても、表面保証によって後々に発生するかもしれない損害に旧株主はずっとずっと怯えなければならなくなります。
旧株主は、表面保証からは逃れることができないのです。

第三者への株式譲渡では表面保証で旧経営陣の責任が明確化されますが、親族間、特に親子間の事業譲渡では、「まあ、ええやんか」でなし崩し的に事業譲渡が成立してしまう可能性が高くなり、世間での多くの親子間事業譲渡では、「まあ、ええやんか」で済ませられているケースが大半だと考えられます。

潜在的リスクの存在を知らないまま、後々事業承継前の問題が噴出して困るのは、事業譲渡を受けた創業者の息子本人です。

このように、親子間であっても、事業承継に際しては、潜在的リスクを早期に潰しておくことが必要不可欠です。
また、潜在的リスクを排除して、会社を身綺麗にして事業を承継するのが現世代経営者の責任です。
近い将来事業承継に直面するであろう中小企業経営者は、常日頃から、会社を身綺麗にしておくことを忘れてはならないのです。

 

【中小企業経営者の心得】中小企業だからこそ高い倫理観がオーナー社長に求められる理由とは?も併せてご一読下さい。

公式サイト「次世代に残せる老舗企業の創造」もご覧下さい。

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