【中小サービス業のコロナ対策】中途半端な条件変更(リスケジュール)の効果が薄い理由とは?

今日は、中小サービス業のコロナ対策として、中途半端な条件変更(リスケジュール)が効果が薄い理由について考えます。

今日の論点は下記の2点。

1 資金繰り表はリスクシナリオで作成する
2 どうせリスケするなら一旦元本返済をゼロにする

どうぞ、ご一読下さい。

1 資金繰り表はリスクシナリオで作成する

新型コロナウイルス感染拡大初期段階から、3年以上が経過して、コロナ資金を調達した中小サービス業にとって、コロナ資金の元本返済据置期間が終了して、いよいよ返済が始まって大変だ、という報道がいまだに散見されます。

この報道について、北出は少し言いたいことがあるので、この際、少しお話ししてみます。
コロナ資金を借入るのに当たって、「流石に3年もあったら、元に戻るやろ」という立て付けで、期間10年間(民間金融機関の場合、ただ、日本政策金融公庫など政府系は最長15年間)で、内、元本返済据置期間3年間、実質7年間で返済という形で、少なからぬ中小サービス業がコロナ資金を調達しました。
確かに、蓋を開けてみれば、長い長い3年間を経て、大阪にはインバウンドが戻り、ミナミも梅田もコロナ前かと見間違うほどの活況を呈するようになりました。

他方、ほとんどの中小企業サービス業は、出店にかかる設備資金や仕入などにかかる運転資金の借入金をコロナ前から借り入れていて、コロナ前からある程度の銀行取引が確立されていて、「コロナで大変だ」という際には、むしろ金融機関、中でもメインバンクは積極的に中小サービス業にコロナ資金を支援したことは間違いありません。
そのような中小企業の場合は、コロナの真っ只中でも、コロナ資金とは別のコロナ前からの既往資金の返済があったため、おそらく去年や、下手をすると、一昨年には、既往借入金も含めて、条件変更を行っていた可能性が極めて高いのです。
当たり前ですが、事業継続を前提として、金融機関側もそのような条件変更には柔軟に応じてきたことは間違いありません。

ここへきて、コロナ資金の返済が大変だ、という会社は、コロナ前は無借金か、それに近いような状態で、ろくにメインバンクとの信頼関係もなかったことが想定されます。
当たり前ですが、コロナ資金だけのお付き合いの中小サービス業は、コロナ資金を借りっぱなしで、コロナ資金調達後のモニタリング(資金繰り表や試算表の提出による定期的業況報告)もなされていなかったことが容易に想像できます。
そんな会社が、「ここへきて、返済が大変だ」と言ったところで、金融機関へのモニタリングを怠ってきた中小サービス業の経営者は、北出に言わせれば「今更、何言ってんの?」という風に感じています。

話がそれましたが、幸いにもここまで条件変更を行うことなく、返済を約定通りに行ってきた中小サービス業の中でも、人手不足による人件費高と円安進行による原材料高によって収益が悪化し、資金繰りが厳しくなっている中小サービス業があっても不思議でもなんでもありません。
もちろん、伴走型資金で追加で資金調達というのも選択肢としてアリですが、コロナ資金を相当程度借入てきた中小サービス業にとっては、追加のニューマネー調達が容易ではなく、返済の条件変更(リスケジュール)やむなしの状況も想定されます。

条件変更が妥当がどうかを見極めるために必要になるのが「資金繰り表」です。
資金繰り表で、最低向こう1年間の資金繰りをシミュレートして、資金ショートしない(月末時点の現預金残高がマイナスにならないこと)ことが見込まれないと、条件変更、リスケジュールする合理性を失います。
このような場合、資金繰り表の作成には、楽観的な見通しは一切排除して、売上高の予想、原価の推移予想、人件費等諸経費の見通し等、万事、厳しめに想定する必要があります。
万事、厳し目に見積もることを「リスクシナリオ」による想定と言います。
「リスクシナリオ」よりも結果的に上振れれば万々歳です。
やばいのは、「リスクシナリオ」で想定したにもかかわらず、下振れするケースです。
業況が厳しく、資金繰り余力が低下することが懸念される中では、リスクシナリオによる資金繰りの想定がマストなのです。

2 どうせリスケするなら一旦元本返済をゼロにする

北出が時折拝見するケースなのですが、返済の条件変更が「中途半端」になっている場合です。

例えば、コロナ資金とコロナ前からの既往資金を合わせた月次元本返済額が100万円で、条件変更して月額40万円に減額というケースです。
もちろん、それで資金が回ればそれに越したことはないのですが、円安はそう簡単に修正できそうにもありませんし、短期的な人手不足の解消も望み薄です。
中途半端にリスケジュールして、数ヶ月経ってから、「やっぱりしんどいから、元本返済減額を頼みます」というケースを金融機関側は嫌います。

どうせ、リスケするのなら、一旦、元本返済をゼロにしてしまうのがスムースだと北出は考えています。
一旦元本返済をゼロにして、出血を完全に止めて、同時に、経営課題を洗い出して、経営課題を解決していく具体策を数値を絡めてアクションプランで明確化する方がずっと合理的です。
更に、大切なのが、1年後、遅くとも2年後には、確実に返済をリスタートして、「このペースなら収支も資金繰りも改善していく」という道筋を立てられれば、返済をリスタート後、着実に返済額を増額していくことも見えてきます。

このように、リスケジュールはやるなら一刀両断です。
中途半端なリスケジュールは効果が薄く、どうせ返済を止めるなら一旦ゼロにしてしまう、これがアフターコロナで中小サービス業の生きる道なのです。

 

【中小企業の銀行対策】金融機関への毎月モニタリング(月次報告)が中小企業経営者の重要な役割である理由とは?も併せてご一読下さい。

公式サイト「ポストコロナの中小企業の創造」もご覧下さい。

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