【中小企業の銀行対策】リスケジュール中の金融機関返済を早める方法とは?

今日は、中小企業の銀行対策として、リスケジュール中の金融機関返済を早める方法について考えます。

今日の論点は、以下の2点です。

1 返済額は無理なく設定する
2 想定以上のFCFが創出できた場合の返済前倒し

どうぞ、ご一読下さい。

1 返済額は無理なく設定する

先の民主党への政権交代当初にスタートした中小企業金融円滑化法以降、中小企業が取引金融機関各行からリスケジュール(条件変更)をお願いすることが珍しくなくなりました。
4年前に突如世界を席巻した新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた中小サービスの多くが、事業継続を最優先するため、コロナ特例リスケや収益力改善計画の下、リスケジュールが実行されました。

リスケジュールへのハードルが低くなったとはいえ、「借りたカネは返さなければならない」わけなので、リスケジュールを受けた中小企業は、然るべき収益改善を図り、金融機関への元本返済を再開、増額していって、最終的にはリファイナンスを実現して、「正常先」に回帰していかなければなりません。
リスケジュールに際して、弊所も作成のお手伝いをさせて頂いていますが、各取引金融機関に対して、収益改善の道のりを明確化した経営改善計画の策定が必須です。
返済額の設定は、収益改善の結果、計画2年目は、月額いくらで再開、計画3年目は月額何がしかの増額、といった具合に、FCF創出額の一定程度の割合を返済に充当していくのが通常です。
返済額の設定には、月額総額いくらで、各金融機関への返済額は借入残高で按分します。
返済額を借入残高で按分することはプロラタ方式と呼ばれています。

多くの賢明な中小企業経営者は、「なるべく早く返済を再開、増額して元の普通の会社に戻したい」と願っているので、ついつい返済額を多めに設定するような意向を示しますが、想定したFCFを創出できなければ返済の再開ができなかったり、返済額を計画よりも減額することを余儀なくされてしまいます。
これでは、取引金融機関も困ってしまうので、返済額の設定は無理のない程度で設定するように弊所では配慮するようにしています。
また、リスケジュールを受けた中小企業は、経営改善計画の中で明確化しているアクションプランを着実に履行し、実行していくことが必要であることは言うまでもありません。

とはいえ、一時的な業況悪化によってリスケジュールはやむなしなのですが、返済を計画通りに増額し、リファイナンスを実現していくことは、なかなか簡単なことではないのが現実です。
リスケジュールからの経営改善の実現には、経営者の経営改善への強い覚悟が必要なのです。

2 想定以上のFCFが創出できた場合の返済前倒し

新型コロナウイルス感染症が概ね収束して、やがて1年が経過しようとしています。
ここ最近の弊所のお客様の中小サービス業の中では、インバウンド需要の回復の効果が顕在化して、原材料高や人手不足による人件費高騰の影響を受けながらも、トップライン(売上高)は過去最高を計上するようになっています。
インバウンド需要の追い風を受けて、ここ最近の業績推移は、経営改善計画よりも上振れているケースが散見されます。

こうなってくると、経営者としては返済額の増額が視野に入ってきますが、とはいえ、例えば飲食業であればインバウンド需要があるとはいえ、2月、6月や9月といった閑散月があるのも見逃せません。
リスケジュール中であるため、ニューマネーの調達は原則難しいことを勘案して、月額の返済額は計画通りとしながら、例えば、決算のタイミングで、FCFの増加分の幾ばくかを内入れ(まとまった金額の返済)することを行っています。

決算のタイミングで内入れをすると、計画以上に借入残高を圧縮することができる他、要償還債務の償還年数を短縮することもできます。

面白いもので、リスケジュール当初は、アクションプランを実行してもなかなか成果が出にくいのですが、ちょっとしたことでPDCAが回り出して、計画を上回る収益を産むことができるようになります。
成功体験が次の成功体験を作っていくわけで、北出はこのような現象を勝手に「成功体験の信用創造」と呼んでいます。

外国為替市場での円安傾向は短期的には続きそうであるため、原材料単価が高止まることが予想される他、世間での賃上げ機運の高まりによって、人件費の上昇も避けられません。
中小企業経営者は、コストアップを上回る客単価の上昇によるトップラインの上振れを実現することで、経営改善を推進していくことができることを認識する必要があるのです。

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