【中小企業の銀行対策】今話題の信用保証協会への「代位弁済」の実像とは?(その1)
今日は、中小企業の銀行対策、コロナ対策として、今話題の信用保証協会への「代位弁済」の実像について考えてみます。
代位弁済については、一般的にわかりにくく、北出が資金繰り余力の乏しくなっている中小企業経営者に伝えたことがあるので、今日から2回シリーズで代位弁済を取り上げます。
今日の論点は以下の2点。
1 代位弁済のザクっとした仕組み
2 代位弁済は千差万別である
どうぞご一読ください。
1 代位弁済のザクっとした仕組み
コロナで傷んだ中小企業で、「コロナ資金の返済が始まり、資金繰りの負担となって大変だ」というステレオタイプに報道されました。
現に、本日(2023年11月7日付)日本経済新聞朝刊では、今年度4月以降8月までの信用保証協会への代位弁済件数の前年比増加が報道されました。
誌面では、代位弁済後に破産法などの法的措置に追い込まれた例が取り上げられていて、それを読んだ読者は、「代位弁済」=「倒産」というイメージが付きまといます。
代位弁済とはなんなのか?
代位弁済で本当に会社は潰れてしまうのか?
コロナで傷んだ中小サービス業では、「代位弁済」というワードを対岸の火事として笑えない経営者が少なからずいらっしゃるはずです。
ここでは、よくわからない「代位弁済」について少し基本的なところからお話をしてみます。
資産背景が乏しかったり、保守的な取り組みスタンスを優先する金融機関では、中小企業向け融資の多くに信用保証協会の保証承諾を頂いて、融資に取り組んでいます。
信用保証協会は、いわば、中小企業の金融機関融資にかかる「保証人」で、各都道府県に存在する他、名古屋市、岐阜市といった基礎自治体に置かれているケースもあります。
通常の融資を受ける中小企業、融資をする側の金融機関、信用保証協会の関係を俯瞰図として示したものが下記の「表1 通常取引」です。
債務者の中小企業は、信用保証協会に保証料を支払います。
ところが、返済が滞ったりすると、債務者中小企業は、「表2 返済不能」の状態となります。
返済不能の状態が続いたり、会社や連帯保証人の資産が別の債権者(例えば、社会保険事務所、税務署や仕入先等)に差押を受けたりすると、「期限の利益喪失事項」に該当するため、「表3 代位弁済」に示すように、金融機関は信用保証協会に代弁申請(代位弁済を信用保証協会に求めること)をし、信用保証協会の「代弁相当」と判断すれば、融資(貸出)債権は、金融機関から信用保証協会に移転(債務者が債権を立替払をし、債権が移転することを「代位」という)し、代位弁済が成立します。
代位弁済後は、債務者中小企業は借金がなくなるわけは決してなく、信用保証協会と弁済方法を相談し、毎月返済を継続していきます。
これが、ザクっとした信用保証協会への代位弁済のフローです。
2 代位弁済は千差万別である
「1 代位弁済のザクっとした仕組み」は、代位弁済の極めてシンプルな仕組みをご紹介したものです。
これだと、小規模事業者や個人事業主には当てはまるかもしれませんが、年商3億円、5億円、10億円といった単位の中小企業には当てはまりません。
なぜならば、平たく言えば、無担保(有担保なし)で、金融機関のプロパーなしというベーシックなモデルだからです。
プロパー資金があれば、代位弁済以降でも、金融機関はプロパー資金分について不良債権(実質破綻先、もしくは破綻先)とし、全額貸倒償却しながらも、回収は継続します。
信用保証協会の保証付の融資についても、一般保証等責任共有部分の20%は金融機関としては貸倒損失となってしまいます。
また連帯保証人への求償も続き、連帯保証人も無傷では済みません。
不動産担保があれば、通常、メイン行やサブ行は、債権者を自行とした根抵当権の一部を信用保証協会に流用するので、元本確定後根抵当権の一部が金融機関から信用保証協会に移転します。
租税公課の滞納状況に重要です。
消費税や社会保険料の滞納があれば、いかに信用保証協会といえども、ましてや金融機関としても、租税公課が優先債権となるので、租税公課の滞納処分を優先せざるを得ません。
信用保証協会としては、租税公課の滞納があれば、余計に長期弁済とならざるを得ません。
このように、代位弁済後、債務者中小企業がどうなるかについては、実は千差万別、ケースバイケースということになってしまいます。
代位弁済やむなしという中小企業経営者の方がおられるようでしたら、何がともあれ、事態が切迫しているでしょうから、北出までお気軽にお声がけください。
中小企業経営者としては、事業継続のため、表舞台で商いを続けるためにも、信用保証協会への代位弁済を安易に行うべきではありません。
代位弁済については、まだまだ沢山お伝えしたいことばかりなので、今日は一旦ここでおしまいにしますが、続きは明日、また。To be Continued.