【中小企業経営者の心得】一般個人との取引や交渉に最大限の注意が必要な理由とは?
今日は、中小企業経営者の心得として、一般個人との取引や交渉には最大限の注意が必要な理由について考えます。
今日の論点は、以下の2点。
1 一般個人は10対0を求めてくる
2 B To Bでも一般個人相手の交渉は起こり得る
どうぞご一読下さい。
1 一般個人は10対0を求めてくる
一般に、不特定多数の個人との取引には、現金回収やクレジット等での回収であるため、貸倒リスクは相対的に低いと言えます。
日々の取引で、売掛の回収サイトが長かったり、受取手形の手形サイトが120日に渡るようなB to Bの商いの経営者からすると、現金回収やクレジットのように平均回収サイトが0.75ヶ月のような短期で売掛債権が回収できるビジネスモデルを羨ましく感じられるかもしれません。
ところが、貸倒リスクが限りなく低い一般個人との取引には、別の意味で大変な労力と手間がかかります。
中小企業同士のB to Bの場合、特に、経営者同士は「お互い様」を知らないうちに意識しているので、そうそう無下なことはしないのが普通です。
例えば、値上げ交渉を行う際であっても、「値上げですか。そりゃこのご時世だし、御社が大変なのはわかりますよ。でも、うちも大変なんですよ」という具合のやりとりがあって、5%の値上げのところを値上げ幅を2%でお互いが折り合ったりします。
大企業相手の取引はとにかく、中小企業同士の取引であれば、暗黙の了解で共感するところがあるので、5対5なのか、3対7なのか、6対4なのか、双方が一定のところまで譲歩して、同意に至るというのが真っ当なB to Bの世界です。
ところが、一般個人相手だとなかなかそういうわけにはいきません。
「御社も大変ですね」のような共感をしてくれるような一般個人はそうそういるものではありません。
「カネ払ってるんは俺なんやから、はよ、せえや」のような自分ファーストの一般個人が一定数存在します。
ましてや、SNS流行のこのご時世ですから、「気に食わんなあ」くらいの出来心で、会社の存続に関わるような悪質な動画がアップデートされてしまいます。
カスハラなんて言葉が流行るのは納得させられます。
平たくいうと、一般個人のお客様は10対0を求めてくるので、だからB to Cは難しいのです。
2 B To Bでも一般個人相手の交渉は起こり得る
こうやって書いてしまうと、B to Bの経営者は、「そうか、うちはそういうの、関係ないから安心や」と思ってしまいがちですが、そうも言っていられないケースに遭遇するかもしれません。
今時の町工場、中小製造業で、特に、住宅地の近くに工場が立地している場合は、騒音対策に驚くほどの経営資源を割いています。
騒音問題が勃発してしまうと、下手をすると、現在の工場をたたんで、代替え地を求める必要が出てきます。
会社の近くに駐車場を借りていた場合、相続で地主が変わってしまった途端、相続税の納付のため売却するため「来月末までに退去してください」のような事態が起こり得ます。
そのような揉め事の場合、ほとんどは、相手が一般個人で、こう言ってはなんですが、「変な人」です。
普段の中小企業同士の暗黙の了解の中でのB to Bの掟はそこでは何の役にも立ちません。
米国のように一般個人の権利意識がより一層強くなって、訴訟が当たり前のような世の中になってくると、「変な人」から突然会社の日常が脅かされるかもしれません。
中小企業経営者は、日々、収益改善に取り組み、企業価値を向上させていくことだけに専念するのではなく、いつ降りかかってくるかもしれない「変な一般個人」からの災難に的確に対応する必要があるのです。