【中小企業の銀行対策】「債務償還年数」を10年程度にしなければならない理由とは?
1 コロナリスケは、「特例リスケ」から「収益力改善計画」へ
新型コロナウイルス感染拡大の初期段階から丸3年。
コロナ資金を調達するだけ調達して、返済を特例リスケで止めた上で、アフターコロナへの移行によって、中小のサービス業、飲食業、旅館業などはなんとか、本業のキャッシュフローベースの「経常収支」がプラマイゼロにまで持ってこれていると言うのが現状です。
確かに、特に、北出が拠点としている大阪、特にミナミでは、中国本土からの中国人は未だ見かけないものの、韓国人、台湾人を中心に、アジアからのインバウンドは着実に戻りつつあります。
「特例リスケ」がほぼ期間満了となる中、多くの「コロナ特例リスケ先」が、「収益力改善計画」に移行し、引き続き各府県の中小企業活性化協議会からのサポートを受けています。
「コロナ特例リスケ」から「収益力改善計画」へ。
非常時モードから、徐々に平常モードへ回帰していくフェーズです。
コロナ対策の行政からの支援が相次いで縮小している中、業績回復が進まないことを「コロナやからしゃあない」にしてはいけないのがコロナ丸3年の今です。
実際、飲食業であっても、相変わらずお客様が十分入らず、閑古鳥が鳴いている店がある一方で、行列ができたりなかなか予約が取れないような繁盛店が現れてきていて、外目からも明らかに優勝劣敗が明白になってきています。
コロナで痛んだサービス業、飲食業や旅館業は、これからが正念場なのです。
2 返済ストップから再開へ。リファイナンスへの道は長くて遠い。
インバウンドが戻りつつあって、2類から5類への移行が現実味を増してきた今、本業で戻ってきたフリーキャッシュフローを更に太いものとして、次のフェーズとして、「しっかりと返済をしていく」ことが、コロナで痛んだサービス業各社の最も大きな経営課題となってきます。
実際、多くのサービス業の場合、コロナ前からの出店資金等既往の借入金よりもコロナ資金の借入金の方が多くなってきています。
事業継続に必要であったコロナ資金ですが、当たり前ですが、その資金は「後ろ向き資金」であったため、今現在、調達した資金は跡形も残っていません。
これからのコロナで痛んだ中小サービス業は、コロナ前既往借入金に加えて、コロナ資金もしっかりと返済していく道筋を明確にしていかねばなりません。
ようやく返済がスタートしたところで、要償還債務の償還年数(現在の返済可能な返済額で、完済まで何年かかるか、という指標。「要償還債務の償還年数」=「借入金総額」÷「月額元本返済額」×12)は30年とか40年とか、場合によっては100年近くになってしまいます。
要償還債務の償還年数を0にする必要はありません(よっぽどの現金商売でない限り、経常的な運転資金は必要となるから)が、金融機関の目線としては、要償還債務の償還年数を10年程度とすることが一つのベンチマークとなります。
10年で返済できるとなれば、「返済期間10年の運転資金」として借換(「リファイナンス」という、もちろん、実質債務超過の解消の可否の問題がありますが、実質債務超過のお話は別途改めます)が視野に入って、リスケから解放され、実質債務超過の解消可否はあるものの、債務者区分が「正常先」への回帰も可能となります。
とはいえ、実際の経営改善の現場感からすると、要償還債務10年程度は、口で言うほど、簡単に実現できるものではありません。
販売機会を拡大、原価をコントロールして、固定費を抑制することで、フリーキャッシュフローを増加させ、返済額を増額させていくと言うのは極めて地道で、即効性にも欠けるので、ともすれば、経営者がモチベーションを維持し続けられなくなることさえ懸念されます。
他方、コロナ禍で数多くの会社、お店が姿を消して行きました。
明確に倒産には至らなかったまでも、フェイドアウトするように自主廃業して行った会社、お店がどれだけあったことでしょう。
コロナで痛んだ中小企業経営者の皆さん、世の中は、着実に動き出してきています。
リファイナンスまでの道は長く、遠く、険しいものですが、せっかく生き残った会社、お店を今のこの段階で見切りをつけるのはあまりに悲しいことです。
少しだけ目線を上げて、要償還債務の償還年数10年程度にまでもっていくために必要なことを、少し立ち止まって考えてみてはいかがでしょう。