【中小企業の銀行対策】返済のための借入をもういい加減にやめなければならない理由とは?
1 キャッシュアウトを止めるのが先決だ
今日は、返済のための借入をもういい加減にやめなければならない理由について考えます。
運転資金の長期借入金は、通常、毎月、約定返済がつきます。
例えば、金額30百万円、期間5年間、元本据置なしという一般的なケースだと、毎月の元本返済額は500千円、60回の返済となります。
キャッシュがなんとなく減ってくると、4年間返済が進んで、残債6,000千円を、元の30百万円で借り換える「折り返し」で、資金調達するケースがままあります。
しかし、長期運転資金というのは、そもそも仕入があって、仕入支払が先行し、在庫を徐々に売掛金や受取手形に換えていって、最終的に現預金になる下支えするという性格の資金です。
資金調達しておいて、返済が途中の段階で、その資金を折り返して資金調達する必要が出てくるということは、基本的にキャッシュアウトが進んでいる証左です。
キャッシュアウトを止めない限り、折り返しのタイミングが、最初、資金調達から4年後だったのが、3年後になり、折り返しの期間が段々短くなっていって、最終的に折り返しでの資金調達ができなくなるのは目に見えています。
この借入こそ、返済のための借入に他なりません。
トータルで見て、支出を入金でまかなえていない状況を改善しない限り、その先に見えてくるのが、泣く泣く金融機関にリスケジュールをお願いするという姿です。
もっと下手に言うと、資金繰りの問題なのであって、いくら試算表上で利益が出ていても、キャッシュが減っていく原因を究明するため、資金繰り表を作成して、過去の実績から未来の資金繰りをシミュレートするのが喫緊の課題です。
キャッシュが尽きてしまうと、黒字倒産が起こってしまうのです。
2 いつまでもあると思うな、コロナ支援資金
返済のための借入については、コロナ資金についても同様です。
コロナ資金は制度として終わりましたが、コロナ資金を代替するのが伴走支援型資金です。
しかしながら、伴走支援型資金については、コロナで傷んだサービス業等のほとんどのケースでセーフティネット4号保証が使われていますが、そもそもセーフティネット4号保証は、非常時対応そのものです。
コロナ資金と同様、セーフティネット4号保証は、信用保証協会100%保証ですが、このような資金がいつまでもあると高を括っているとえらい目に遭います。
多くの中小サービス業は、コロナの影響でBSが痛んでいるため、金融機関は100%保証なら資金を出すスタンスですが、一般保証等80%保証(金融機関の責任共有部分20%)が適用されるとなると、金融機関は資金を実行して間もなく、責任共有部部分20%に関して引当を積まなければならないとなると、金融機関営業店は、たちまち、追加の与信にネガティブになります。
また、100%保証を既往借入について、80%保証での折り返しは効かないので、今後、余計に追加の資金調達が難しくなります。
実際、大阪の街には、インバウンドが舞い戻ってきて、コロナ前と同じような活況が戻ってきています。
このような環境下では、現在進行形の伴走型資金を含めたコロナ支援資金は、制度として今後縮小していくことは避けられません。
資金繰り、キャッシュフロー最優先経営を目指すためにも、資金繰り表の運用が必須です。
入金の中で支出を賄うと言う当たり前の会社経営に立ち戻るいい機会でもあります。
場合によっては、中小企業活性化協議会にお諮りして、収益力改善計画の下、一旦、コロナ資金だけではなく、既往借入金を含めたリスケジュールに踏み切って、資金繰り改善に注力する選択肢も排除すべきではありません。
中小企業経営者は、コロナ支援資金がいつまでもあると楽観視することなく、いかにキャッシュを増やしていくことができるのかを自社のKPIにして、入金の中で支出を賄える会社へ転換することを目指す必要があるのです。