【リスケ中の中小企業経営者向け】優先弁済とプロラタ返済とを切り分ける必要性とは?
今日は、リスケジュール中の中小企業経営者向けに、優先弁済とプロラタ返済とを切り分ける必要性について考えてみます。
今日の論点は、以下の2点。
1 いつまでも元本返済を止めておくわけにはいかない
2 優先弁済とプロラタ返済の違い
どうぞ、ご一読下さい。
1 いつまでも元本返済を止めておくわけにはいかない
2023年度も残り1ヶ月を切って、3月決算の企業や役所では年度末モードに入ってきました。
新型コロナウイルス感染症拡大にかかる様々な公的支援も3月末にかけて、次々に期限切れとなっていきます。
コロナの影響を受け、リスケジュールを余儀なくされた中小サービス業企業も「コロナだからまだまだ大変で・・・」という理由で業績不振を語るフェイズはもうおしまいです。
「借りたカネは返す」という当たり前の商道徳が、リスケ中の中小サービス業にも試されるタイミングが到来します。
コロナに関する支援策が続々打ち切られる中にあっても、大都市部では、インバウンド需要がコロナ前に勝るとも劣らない水準にまで達していて、飲食業や宿泊業といった中小サービス業はコロナ前の売上高を上回るようになっています。
もちろん、円安進行による原材料単価の上昇は無視できるものではありませんし、人手不足もいよいよ深刻です。
そうした中、いつまでも元本返済を止めて、利払いだけというわけにはいきません。
実際問題として、曲がりなりにも、経営改善の計画書の類のものを関係各機関、金融機関等債権者に提示し、それに基づいて経営改善を進めていくという立て付けの中、ずっと元本返済が再開できないということになると、文字通り、ゾンビ企業そのもので、再生の見込がないと関係各機関、金融機関等債権者がジャッジするのも止むを得ないところです。
北出がこう言っては元も子もありませんが、ずっとリスケジュールが当たり前の会社の経営者も生温いし、従業員にもイノベーションを起こそうというような覇気も感じられません。
元本返済を再開、増額して、リスケジュールから脱して、リファイナンスを実現するのは、経営者としては並大抵の経営努力ではなし得ないことです。
弊所がお手伝いをしていて、経営改善が順調に進んでいる中小企業経営者は、日々、血の滲むような努力を続けていらっしゃるというのが現実なのです。
2 優先弁済とプロラタ返済の違い
ところで、いざ、元本返済を止めるフルリスケジュールから返済を再開する際、優先弁済とプロラタ返済という言葉を、リスケジュール中の中小企業経営者は耳にしたことがあるかもしれません。
プロラタ返済とは、FCFの創出状況と収益改善の見込みを勘案して、月額元本返済額を決めて、各金融機関の残高按分で、返済額を決めることを言います。
これに対して、優先弁済というのは、リスケジュール後に実行されたニューマネーの返済のことを言います。
コロナ前からリスケジュールをしていて、コロナ資金を借入れた場合、このコロナ資金の返済が優先弁済の対象となります。
優先弁済分は最優先で返済をして、リスケジュールの対象となっている既往借入金の返済のことをプロラタ返済と言います。
優先弁済の債権者(金融機関)は、他の金融機関がリスケジュール中を理由としてニューマネーを出さなかったため、「そのニューマネーの返済は優先させてくれ」という具合です。
幸い、優先弁済の対象となるコロナ資金の返済期間は、民間金融機関で10年間、政府系では最長20年間という超長期にわたるため、相対的な返済負担を軽減することができます。
このように、リスケジュール中の中小企業経営者は、優先弁済とプロラタ返済に限らず、金融機関と対等に交渉するため、経営改善への努力に加えて、日々学ぶことが必要なのです。