【中小企業の銀行対策】日本の中小ゾンビ企業が延命できるわけとは?

今日は、中小企業の銀行対策として、日本の中小ゾンビ企業が延命できるわけについて考えます。

今日の論点は、以下の2点。

1 リスケジュールを当たり前にしてはいけない
2 リスケジュールは金融機関に利益をもたらす?

どうぞ、ご一読下さい。

 

1 リスケジュールを当たり前にしてはいけない

2009年に施行された中小企業金融円滑化法(2013年3月末で期限切れ)以降、金融機関からの借入金のリスケジュールのハードルが大きく下がりました。
新型コロナウイルス感染症の影響が広く中小企業に及んだことによって、少なからぬ中小サービ業がリスケジュールを金融機関に要請するに至りました。

金融機関としても、「融資先からの条件変更には柔軟に対応するように」という行政指導への配慮もあり、リスケジュールに適宜対応するようになっています。

ところが、借入金は、あくまでも借入金で、補助金や助成金のように、「くれてやる」おカネでは断じてありません。
「借りたカネは返さなければならない」のが商道徳上、当たり前の話です。
「待ってもらえるんだから、もうしばらく待ってもらおう」という中小企業側の甘えは禁物です。

経営改善計画を策定し、収益改善を実現するためのアクションプランを着実に実行し、「結果を出していく」ことが肝要です。
中小企業経営者は、リスケジュールを当たり前にしてはならないのです。

2 リスケジュールは金融機関に利益をもたらす?

ここで、リスケジュールをしていない中小企業経営者にはある疑問が頭をよぎります。
「いくら返済を猶予してもらっているとはいえ、多額の借入金を負っているのに、なんで潰れないのか?」
確かに、これは真っ当な疑問です。

これには、中小企業側だけではなく、債権者の金融機関の都合も存在します。

まず、中書企業側にとっては、リスケジュールによって、返済を猶予してもらうことで、資金繰りはかなり楽になります。
借入金が減らないので、支払利息は以前として高止まりますが、返済負担から解放されるので、経常損益でプラスマイナスゼロで資金が回る計算です。

他方、金融機関側の都合はどうでしょうか?
例として、借入金1億円(内、信用保証協会の保証と担保等で保全されている分が80百万円、実質信用部分20百万円)、平均約定レート3.000%の中書企業で説明します。
信用保証協会の保証と担保等で保全されている分が80百万円については、今日、この会社が倒産しても、金融機関には保全がありますが、実質信用部分20百万円については、実損が発生します。
リスケジュール直後の自己査定で、金融機関が実質信用部分20百万円について、100%引当を積んだ場合(貸倒引当金繰入額20百万円を計上するのと同義です)、その時点で金融機関営業店では20百万円の損失が発生します。
営業店にとっては20百万円の損金計上は手痛い大きな損失ですが、20百万円引当を積んだことによって、実質の借入金元本は80百万円に減少します。
このため、金融機関の表面の利回りは3.000%(年間の受取利息は3百万円)ですが、20百万円の引当を積んだことによって、金融機関の実質利回りは3百万円÷80百万円、3.750%にまで増加します。
引当を積むことによって、金融機関の実質利回りは上昇するので、金融機関としては、「儲かる」わけです。

また、返済が再開されれば、実質信用部分の回収分が引当金の戻し益として、利益となって戻ってきますので、金融機関は二重に「おいしい」のです。

従って、リスケジュールに金融機関が応じても、返済の再開と返済額の増額は、事業継続が可能であることを前提とした範囲にとどめていて、強硬に貸しはがしを行うことはないのです。

金融機関の自己査定、信用格付けは債務者からは見えにくいものですが、インフレ局面を迎えた今だからこそ、収益改善のスピードを上げて、早期のリスケジュール脱却を目指す必要があるのです。

 

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